2010年12月10日金曜日

トビラがひらく~♪





      「トビラがひらく」

こおりのうえを
ひたむきにすべる
きみを見ていると
しあわせになる
ゆめのトビラがひらくから
思いきってジャンプ


おおきな目のなか
ほのおがゆれて
ときめくおもいが
こおりをとかす
恋のトビラひらくまで
情熱のステップ

やわらかなえがお
すなおなことば
思いのままに

どこまでも行こう
こころのトビラひらいてる
大好きなスケーター

2010年11月23日火曜日

●’新しい本)冬のタンゴ♪


       「冬のタンゴ」


凍てついた真冬の空の
どこか遠くの一角が
砕け散っているらしい
美しい破壊のかけらが
降ってくる音がして

キミは目覚めると
漆黒のレース地の衣装で
踊りはじめる
熱い思いを閉じこめて
胸元のローズレッドの花柄が
燃えている

バイオリンとバンドネオンの
音色がからまりあいながら
宙をすべっていく
どうしても伝えたい思いを
音の波に乗せて
タンゴのステップを踏んでいる

心がつまずいても
また伸びあがって
前に進んでいくような
スタッカートのリズムは
届きそうで届かない
せつなさの軌道。

観客席で見ている私たちも
無心に踊る姿に魅せられて
ひきこまれていく
魂の通路をとおって
キミの内部と同化した瞬間

スケートリンクは青く結晶し
地上の天空になる

思い切りジャンプして
くるくるまわっている
キミはひとつの惑星
手を差し出すと
宇宙が腕を伸ばして
キミに触れそうになる

さっ いっしょに踊ろう

2010年11月9日火曜日

お月さま~♪


    「お月さま」

まっ暗な夜道で
迷っていたら
空にあかりがともったよ
あわい光りがまあるくなって
こっちですよ  と言われたようで
月に向かって歩きだす

銀色のはしごを
するりとのぼり
月のとびらを開けてみた
いろとりどりの風が吹き
ここからどうぞ とささやかれたら
月の向こうにすべりこむ

夜空に咲いている
やさしい花だ
月の花びらひろがって
あたりいちめんあたたかい
大丈夫ですよ と言われたようで
月は夢の通り道

2010年11月8日月曜日

〇<第一詩集)ゆうびんポスト~♪

   「ゆうびんポスト」

日ごとに
ふくらんでいく
行き先不明のことばたち
私の窓からはみ出しそうになったら
いそいで封筒につめこんで
さっ 出かけよう

まるい思いや さんかくの思い
打ち寄せる秋日に揺さぶられ
みんなきちんと四角形になって
じっと息をひそめている

時をためこんで
凝縮されたこころ
切手のふちどりのように
まっすぐなのにギザギザに見える

雲のない国道を南にそれて
名前のない細い道にすべりこむ
地面のたわみを感じながら
(なぜいつも足もとから風が吹いてくるのだろう)
かすれた小草だけが踊っている
「たいせつなものは もうとっくに
空に溶けだしているのに」と
妖魔の低いつぶやき

気がかりを包みこむほどの
光りの量に後押しされて
自転車のペダルがゆっくり回ると
地軸も少し速度を落とす

立ち止まる車輪の影が
地面に深々と映るその向こうで
ほこりのつもった赤いポストが
ぽっかりと口をあけた

「どこにでも連れて行ってあげますよ」

ここだけが明日につながる通路のようで
私、するりっと、吸いこまれていく

2010年9月30日木曜日

〇<第一詩集)秋祭り~♪

     「秋祭り」

あなたのことを
思い浮かべるたびに
まっ青な空が揺れて
どこか知らない所へ
つきぬけてしまいそうな秋の日

ぽつんと地上に立っていると
水晶の珠の内側に
まぎれれ込んでいるようだ
つややかな光りの虹が
いくすじもいくすじも
飛び散って
心の底まで洗われていく

燃えたつ稲穂が
いちめんに広がって
からだの芯まで
秋の匂いに染まる頃
かなたから太鼓の音が
近づいてくる

地面を這うように
低く短調に続く音は
太古から響いてくる
あなたの鼓動の音に
似ているね

はりつめた空気が緩んで
にぎやかな声がはじけ
稲穂に寄り添いながら
秋祭りの御神輿が
ゆっくり通っていく

(いつか三日月の残る朝
稲の花が咲いた
小さくて消え入りそうな花なのに
ふしぎな精気にあふれ
あわく光っていた
稲穂の神さまは
その花あかりを目印に
天からまっすぐに降りてきて
うすい花びらに
そっと触れる)

ゆさゆさと実った稲穂の道を
祭りのざわめきが通りすぎ
空に消えていくと
大地も夢も掃き清められ
金色のキリンが
通ったあとのようだ

2010年9月8日水曜日

’新しい本( クジラと出会った♪

    「クジラと出会った」

真夜中に目覚めると
波の音が聞こえた
海の近くでもないのに
海の匂いがして
うすい波がめくれては
押し寄せてくる

私の意識の入り口に
繰り返しぶつかって
中にすべりこんでくる

そこは深い海のなか
水がからまりあう音が
水底から響くシタールとタブラ
の連音ように高まっていると
音の向こうから
クジラの声が聞こえてきた

低くうねるような声に交じって
すみきった天使の口笛が
ゆらり立ちのぼってくる
クジラたちは愛の歌を
歌い始めたらしい

クジラは宇宙のエネルギーを
体じゅうに吸いこんで
泳ぐたびに
海の水にエネルギーを
転写しているという

ゆらぐ歌声を聞いていると
クジラが海を泳いでいるのか
海がクジラの周りを泳いでいるのか
わからなくなってきた

ふと気がつくと
クジラが私の名前を呼んでいる
もう何千年も前から
呼び続けているのに
どうして気がつかないのだ
クジラはぐるっと旋回して
こちらに向かってきた

月あかりが作った窓が
すうーっと開いて
窓枠すれすれに
クジラが入ってきた

私はクジラといっしょに
夜明けま近の空を飛びまわり
ふたたび海をめざしている

2010年8月25日水曜日

空のおんがく~♪

    「空のおんがく」

秋の空は青いピアノ
すきとおる大きなピアノ
白い雲のけんばんを
風が走っていくたびに
やさしい歌が響いてる

冬の空はヴァイオリン
銀色の空いっぱいに
見えない糸をはりつめて
風が渡っていくたびに
ゆめの音色を奏でてる

空はいつも楽しい楽器
言葉をこえて伝えたい
わたしの想いを音にして
大空のおんがく会は
もう始まっている

     

              (「子どもの本作家クラブ」掲載ヴァージョン」

2010年7月31日土曜日

〇<第一詩集)想い♪

     「想い」

日ごとに
高まっていく想いは
いのちの底で
小さな光のつぶになり
矢のようにつらなって
私の地表を
飛び立っていく

ねむりこんでいる
無意識の海の
果てしない青さに
ひきこまれ
限界のない深度を感じながら
海底近くまで潜水

力のつづくかぎり
さまよって
ただよって

岩影で揺らめいている
あなたの魂に
たどりつきたい

ありったけの光をそそぎ
魂のまんなかを
走りぬける瞬間

(静かな海の底は
わたし自身の底とつながっているの)

つぶやきが
波をくぐって響きわたり
光はずぶぬれのまま
上空に向かって
ひろがっていく

2010年7月19日月曜日

〇<第一詩集)海~♪


     「海」

きしむ音をたてながら
こころが軌道をはずれていく
行き止まりの町で
日常からすべり落ちると
とつぜん呪縛が解けて
海が広がった

海辺に打ち上がられた
流木の背に腰かけて
私は海を見ていた
こんこんと湧き出てくる海水は
くぼんだ陸地に
のみこまれるように
地表を覆っていく

すこしずつ深まっていくね
気がついたら もう足が届かない

くもり空をまねた銀灰色の
光の波はせめぎあいながら
未知の海をひろげ
まるい水平線の向こうから
押し寄せてくる波とぶつかって
砕け散ることを夢見ている

恐竜のような流木は
この世の外からやってきた静けさで
はんぶん砂に埋もれている
さまよっていた時間が
溶けだしているんだね
私の靴の中も砂が入って
ざらざらしてきた

がらんと開いた風景は
見えない力にひっぱられ
うごき続けて定まらない

せっぱつまった思いが
遠近法を無視して
舞いもどってきた
(どこから来たの
 そしてどこへいくの)

空と地面を突き抜ける
道のない道を
ただ流れていくだけ
いつだって途上

海が私を見ていた

2010年7月11日日曜日

アイスクリームの国へ♪

    「アイスクリームの国へ」


お日さまじりじり暑い夏
今日の宿題とけたなら
アイスの国へひとっ飛び
アイスを愛するアイスマン

まっ白ふわふわ雪の上
どこかにみつかる冬のゆめ
つめたい風を身にまとい
アイスの国を大ぼうけん

スプーンでサクサクすくったら
あまい香りがあふれだす
とけないうちに食べちゃおう
アイスパワーでクール来る

こころがトロトロとろけてる
夏の魔法がとけないうちに
とけいを気にせずあそぼうよ
アイスを愛するアイスマン

2010年7月5日月曜日

(新しい本(スクリーン ♪

     「スクリーン」


うす暗がりの映画館では
スクリーンの登場人物だけが
光源になっている

俳優たちが発する感情と
観客の気持ちがつながったり
離れたりを繰り返し
ざわめきが広がっていく

生命の光が動いている
スクリーンをじっと見ていると
私がみつめられている気がする
主人公と同化した瞬間に
大きなスクリーンは
自分の内側に入っていく
入り口になる

エンドロールが流れる前に
自分自身のストーリーを
完結させなければならない

さみしいエピソードが
多すぎる物語だったら
せめて最後だけは
ハッピーエンドにしたい

上映時間は限られている
このフィルムが回っている間に
降り積もる問題を解き明かし
クライマックスにすべりこむ

たくさんのメイキング映像が
目の前に浮かんでくる
あの時、あの場所では
もっと高まる演出を
もっと似合うサントラを
私は監督の視線になる

七夕の夜に現れた人が
私の運命の人だと気づいたら
キャスティングを変更
ストーリーはスピードをあげて急展開
このまま最終章を駆けぬけよう

あなたのスクリーンに
映し出されている私は
今、どんな表情をしていますか
現実のストーリーはいつも進行形だ

2010年6月22日火曜日

●’新しい本(空のピアニスト~♪

    「空のピアニスト」

ちりちりと熱い天空に
まっ白い雲の鍵盤が
いちれつに並んでいる
黒い鍵盤は風の影
きりっと寄りそいながら
かなたまで続いている

空のピアニストは
しずかに一礼すると
山の峰に腰かけて
ピアノを弾きはじめる

指が触れたとたん
雲のピアノの最初の音
が鳴り響き
空のすきまに染みこむと
さざ波がおきる
音がつらなるたびに
波はどんどん広がっていく
音の波 波の音

ピアニストは
世界の感触をひとつひとつ
たしかめるように
指を動かしている
音と音のあいだに潜んでいる音
が謎を解くカギだから

十本の指がいきおいよく
走りだして
妖しいダンスのステップを
くりかえすと
雲は浮かんだり下がったり
空中に音楽が満ちてくる

音の波を受けとめている
大地の耳 耳の大地
地面はゆっくりほぐれていく
山脈はかすかに背伸びして
海や川をつくっている水面は
くすぐったくて身をよじる

空のピアノ曲が聞こえたら
自分が感受できる範囲を
ほんの少しはみ出して
人も自然もいっせいに
自在な感受の方向に
ころがっていく

2010年6月21日月曜日

あまがえる~♪

     「あまがえる」


雨が大好き あまがえる
雨が降るたび よみがえる
雲のなかから 生まれたの

花が大好き あまがえる
あざやかみどり ふりかえる
葉っぱのなかから 生まれたの

歌が大好き あまがえる
みんなそろって 跳びはねる
音ぷのなかから 生まれたの

あまえんぼうの あまがえる
かあさんどこかと かんがえる
夢のなかから 生まれたの

2010年6月16日水曜日

お月さま~♪


   「お月さま」

まるい口あけて
まあっ とおどろく
まんげつのお月さま
どんなことを
みつけたの

やさしいえがおで
わらいころげる
みかづきのお月さま
たのしいことが
あったのね

そらを飛ぶ月は
うちゅうのお口
いろんなもののみこんで
星のひとみを
かがやかす

晴れたよるには
耳をすませてごらん
お月さまの声が
うたうように
きこえるよ

2010年6月4日金曜日

〇(第一詩集)時のランナー~♪


     「時のランナー」

 「かけっこするひと
 このゆびとまれ」
彼方から湧きあがる
神妙な声に誘われて
夜明けま近の空に
するするっと手を伸ばす

闇をあやつっていた星の群れは
とびとびに帰っていくらしい
指先にとまったトンボの軽さで
夜の底をくぐりぬけると
目の前にくっきり浮かぶ一本の線
(スタートラインはいつも真っ白)
朝日をあびた玉砂利は
天球につづく光なのか
頭の中でなにかがはじけて
硝煙の匂いが熱い

「もう ゆびきった」
白線からころがり出た私たちは
いっせいに走る
きゅっとかみしめていた
空がほどけ 地がほどけ
とりとめのない祈りの色が
じんじん広がってくるから
心臓の音は時への賛歌
一瞬の深みへ飛び込んでいく

地面を蹴るたびに
(こんな ちっぽけなことば)
(こんな ちっぽけなこころ)
古い呼吸のように投げすてる
右肩をかすめて
通り過ぎていく人たちの
背中のかたちを
目に映しながら

あのコーナーを曲がったところに
新しい夢が落ちているかもしれない
予感だけに満ちた
時のトラックを
今日も走る

2010年5月28日金曜日

空飛ぶいちご~♪


    「空飛ぶいちご」

青くてまるい空の下
いちご畑に行ってみよう
お日さまぐんぐん飲みほして
笑ったいちご すましたいちご
みんないっしょに空見てる
 いちにっさん まっ赤なパワー
 いちごパワー

高くひろがる空の下
いちご畑であそんだら
おなかがキュンとすいてきた
ふっくらいちご とがったいちご
どんどん食べると楽しくなるよ
 いちにっさん まっ赤なパワー
 いちごパワー

たそがれていく空の下
いちご畑のいちごはみんな
空にむかって飛んでいく
きらめくいちご 空飛ぶいちご
夕焼け空になりました
 いちにっさん まっ赤なパワー
 いちごパワー

2010年5月21日金曜日

〇<第一詩集水辺~♪


    「水辺」


風と踊るために
しなやかな手足を伸ばす
草木の生命のかたち
地面を覆いつくす速度で
生いしげると
明け方の夢の中にまで
侵入してきた

はてしなく夏草の続く
土手道にそって歩いていた
ふいに水の匂いが恋しくなって
河原に降りていく
うすれていく境界線に
身を沈めると
熱気をはらんだ草の葉は
胸もとまで届き
澄みきった水面を
包みこんでいた

さえぎられると
遠くまで見渡せる視線
見つめられる触感に
空が伸びあがって
ぐらっと揺れている

めまいするほど
はるかな時をたどってきた川は
水底の砂利や魚影を
いっそうきれいに見せながら
ゆっくり流れている

ギチギチッと
空気がはじけて風が走るよ
草むらから吹きあがる
濃い緑色の昆虫たちは
夢の軌跡を描いている
せいいっぱい広げたうすい羽に
光を乗せて

向こう岸に立つ少年は
たった今地上に降りてきたばかり
白いシャツが光の波に洗われて
やわらかい唇の線が
かすかに動きはじめる
笑顔には星の光が残っていた

風を読んでいたのは
あなただったのですね

2010年5月13日木曜日

’新しい本(出会う~♪


     「出会う」

なだらかに傾斜している
鉄の階段をのぼりきって
歩道橋の上に立つと
空中に伸びる道路には
あかるい陽ざしが集まって
行ったり来たりざわめいている

向こうから歩いてくる人の
まわりに漂う風の色と
眼の光におどろいて
ふいに立ち止まる
何千年も前に
この場所で出会った人の
面影と重なっていった

車の流れをみつめながら
あなたが話しかけてくる
言葉の中から
湧きあがる白い雲は言霊
ふわり浮かんでたなびいて
まっ青な空に配置されていく

ながめているうちに
私たち、どこへ行こうとしていたのか
忘れてしまった
帰るところも忘れ
ふたりの上空に
新しい天空が広がった

ーあなたが作った空を
 どこまでも飛び続ける
 あなたがこぼした海を
 いつまでも泳ぐ

時間が止まったままの
まだ地面のない世界は
着地できないもどかしさ
不安のたびに壊れてしまうけれど

人と出会うために
胸の奥にしまいこんでいる
白い雲を呼びだして

吹きガラスのような宇宙を
何度も何度も
つくり出す

2010年5月6日木曜日

〇’第一詩集)新緑~♪


   「新緑」

暗褐色の樹皮が
すべすべになって
光りはじめるころ
かたい幹の深い奥で
思いつめていた心が
これ以上行き場もなくて
ぽっとはじけた

小さな音が
あたっりにひびき
世界が妖しく揺れている
樹木の心
樹木の夢
ちりちりと散らばって
木の内側をかけめぐる

地層の底から
こみあげてくる祈りのように
染み出して
樹形を描きながら
走りぬけ

木の先端まで
たどりついたものは
枝先からこぼれ
空気に触れるたびに
まっさらな緑の生きものに
変わっていく

あふれ出した
樹木の気持ちは
視線の向こうで
折り重なって
さざめきあって
まるい天空を覆い

風や日光を
そのまま映している

2010年4月25日日曜日

息吹~♪


    「息吹」


樹木は
空に向かって吹きあげた
いのちのかたちをしている

湧き出たばかりの柔らかい緑
大気にはじけ
葉脈のうねりは
無限の方向につづく

大きく深呼吸したら
樹木いっぽん
体の中に吸いこんでしまうよ

五月の朝

2010年4月24日土曜日

風~♪

  「風」


風の中に
佇んでいたら
わたしがからっぽになった
指先から じょじょに
花びらになっていくよ

今度の風に乗ってみようか

2010年4月16日金曜日

〇<第一詩集)春の雨音~♪


    「春の雨音」

るっぴん るっぴん
ふいに明るい雨の音
銀色まだらの大空を
すっすと撫でて るっぴん るっぴん
ひしめきあう水滴曲線に
小さな光を宿し

吸いこまれる のみこまれる
澄みわたる吉備の野へ
びっしょり黒光りの土の中へ

 「何だかあったかいね」
 「うん、ぼくのあたまのなか
 まあるくなってきたよ」
 「からだのすみずみまで
 しみとおっていくね」

ゆうらゆうたちのぼれ
透明なオーロラの微風
ゆうらゆうたちのぼれ
いのちの揺れ
(あの山にねむる古代人は
ひときわつめたい唇に
春の最初の雨つぶを受けたとき
ことんと目をさますという)

ひとり またひとり
土くれをかぶったまま
起きあがるから
荒い息を吐く肩の向こうに
円形のまばゆい空間が広がる

記憶の底の
弥生の土器はさくら色
はるか宇宙樹のてっぺんを
ゆさゆさ泳ぐ
はるかすみと同じ色
土器の中でひたひた波うつ水は
未来形に伸び
大きな太陽を内蔵していた
長い黒髪を後ろで束ねた女の人が
ゆっくり手をひたすと
日光はちりぢりに反射し
顔に照りかえる

いつもこうして最初の命は始まる
いく億もの朝が通り過ぎ
るっぴん るっぴん
地平線の真上をつたう雨の音
果てしない宇宙の時間を
問うことさへ忘れたように
今日の雨は
ノックする

2010年4月4日日曜日

朝~♪


     「朝」

目ざめても
まとわりついてくる夢の断片に
追いかけられながら
荒く挽いたコーヒーに
熱い湯をそそぐと
夢の謎は解けないまま
朝の光を吸いこんで
増殖を始める

春の木立ちのあいだを
まっ白い野ウサギが
駆けぬけて行きます

あたたかい血流が
きゅうに速度を増して
からだじゅうをめぐり
一瞬ごとに起きあがってくる
あたらしい時空を
染めていく

狭くて暗い地下道をさまよっていた
理由のない焦燥感に
せきたてられて
天空につながる道を
探していた

鼻先で芽吹きを感じた野ウサギは
耳をうしろにたおして
風を生みながら走る
地球の内部を
のぞきこんだような赤い炎が
底なしの目の中で燃えて
後ろ足でおもいっきり
地面を蹴ると

鼓動を続ける今日の夢が
昨日の夢のあとを
いっそく飛びに超えていく
春の跳躍

コーヒーポットに落ちる
最後の一適に
きっぱりとした青い空が
小さく映った

2010年4月1日木曜日

あなたの音色~♪

    「あなたの音色」

低くつぶやくような
ピアノの音が
暗闇のなかに浮かび
あわく小さな光源になった

光はつらなったり
はなれたりしながら
宙空を飛びかっている

ピアノの音の一群が
わたしに向かって語りはじめ
目の前で踊りだすと
大きな光に変わる

ピアノを弾いていたのは
あなただったのですね
私はもう迷うことを止め
あなたの方向だけを
まっすぐにみつめる

あなたの音のひとしずくが
するどく輝きながら
今 私の海に落ちてきた

海面がかすかに揺れて
それから深く揺らぎ
波が生まれた

あなたのピアノの音色が
海をゆさぶっている
私という存在の原初の海を

2010年3月26日金曜日

(新しい本(氷上の四分三〇秒~♪


    「氷上の四分三〇秒」

スケート靴を履いて
リンクに立ったら
ぼくがぼくじゃない気がした
氷の上をすべり始めると
顔にあたる風が心地良い
エッジで世界を感じている
(湧きあがる声援を全身で受けとめて
キミは澄みきった表情をしていた)

スピードをあげて滑走
ターンしてスパイラル
ばくの不安感や緊張感を
ブレードが切りさいて
氷上に新しい曲線を描く
一瞬ごとに自分自身の限界を
超えていく
(キミは野生の動物の目をして
懸命に何かを追いかけていた)

思いきり高く飛びあがって
キリキリと回転する
宙に投げられた独楽のように
ぼくのまわりの様々なことを
全部ふり切っていく
クワド トリプルアクセル フリップ 
ジャンプが決まるたびに
拍手が大きな波になって押し寄せる
(キミは見えない翼を持った天使になって
空を飛んでいた)

無心で滑っていると
氷の精霊たちが話しかけてくる
挨拶をかわしながら進んでいく
どうかぼくを前へ前へと
運んでください
無事に着氷できますように
(滑走した跡には、たくさんの花が咲いた
キミは謎の魔術師かもしれない)

氷が溶けるほどの熱気の中
ぼくはステップを踏み続ける
つま先から軽快な音楽があふれ出て
ステップシークエンㇲは
今ここにいるよろこび
(キミの情熱的な演技をみつめていると
私たちはみんな吸い込まれていく)

両手を掲げてアップライトスピン
世界をくるくるかきまぜると
飛び散っていたものが
もう一度ひとつになっていく
四分三〇秒の長い旅をおえて
ぼくはぼくにもどった
(キミは少年のような無防備な顔をして
誰よりも美しく笑っていた)

2010年3月18日木曜日

春いちばんの花~♪


   「春いちばんの花」

がっこう帰りの道ばたで
ほら みつけたよ青い花
大きな地球のすみっこに
そっと咲いていたんだね
春いちばんのたからもの

とても小さな花なのに
みつめているとあたたかい
あかりがパッとひろがって
青い花びら空になる
春いちばんの空の色

さがしつづけたぼくの夢
心の中にも咲いていた
自分でみつけた花だから
ずっとたいせつに守りたい
春いちばんの好きな花

2010年3月13日土曜日

菜の花咲いた~♪


   「菜の花咲いた」

菜の花咲いた あかるい光
黄色いちょうが 飛びまわり
あっちでゆらり こっちでゆらら
ゆらゆらゆらーり集まって
やさしい花が生まれたよ

菜の花咲いた 黄色い広場
春風まるく ふくらんで
あっちでふわり こっちでふわわ
ふわふわふわーりひろがって
けしきがみんな夢のなか

菜の花咲いた うれしい気分
花といっしょに うたったら
あっちでららん こっちでららら
らんらんららーら楽しくて
わたしも黄色い花になる

2010年3月8日月曜日

オドリコソウ~♪


 いろいろな春の野の花が、 咲き始めていますね~♪
今日は、オドリコソウにスポットをあててみました♪
 
 「オドリコソウ」

だれも知らない野原のすみで
あわいピンクのドレスがひらり
めだたないけどキラッと光る
風が吹いたら さやさやおどり
風がなくても じょうずにおどる

だれも知らない月夜の下で
ふしぎな少女のすがたになって
深いひとみがユラッとゆれる
光をあびたら くるくるおどり
光がなくても すてきにおどる

みんな知ってるオドリコソウの
だれも知らないおどるところ
毎日そっとながめていたら
いつのまにか わたしもピンク
オドリコソウと いっしょにおどる

2010年3月7日日曜日

夢のたまご♪

 今日も、もう一篇、童詩を載せてみますね~♪雲って、もしかしたら、夢のたまごかもしれないなあ~♪って思ったの♪この詩は、少し前のもので、曲もついてて、絵とコラボしたこともあります。

    「夢のたまご」

夕ぐれの空で
ゆうゆうあそぶ
雲のむれ
ぼくらのきもちを いっぱいつめて
いろんなかたちに ふくらんでいく

夕ぐれの心に
あかるくうかぶ
夢のたまご
ぼくらのねがいが おおきくそだち
まっ赤にそまって 夕やけになった

夕やけ天使や
ようせいたちが 
はねをひろげ
ぼくらといっしょに あしたへ向かう
夢が飛びかう ふしぎなじん

ふゆの木~♪

 昨日は、海辺の町で、童謡詩のコンサートがありました~♪
その中に、私の作品もひとつ入っていましたので・・今日は、趣向を変えて、童謡詩を載せてみますね♪たまには、いいよね~♪
詩にメロディーがついて、だれかが歌ってくださると、とても不思議な気分になります・・。 (すま・いづるさん作曲 バリトン独唱 秋山啓さん 感謝いっぱいです♪ )

  「ふゆの木」

ふゆの木は
せいたかのっぽ
かたちの見えない
空気の葉っぱで
はるかな空と
つながっている

ふゆの木は
おしゃべり仲間
小鳥のはなしに
うなずきながら
風といっしょに
語りつづける

ふゆの木は
ゆめみるちから
月夜のひかりを
たくさんあびて
はてしない空に
想いを飛ばす

2010年2月26日金曜日

’●新しい本)約束の場所へ~♪

     「約束の場所へ」

見慣れた玄関のドアを開けて
「ただいま」と、すべりこむと
つま先から沈み込む感触に
体が中空に投げ出されている気がした
落葉と腐葉土の匂いに包まれて
私は野外に立っていた
どうやら見知らぬ照葉樹林に
紛れ込んだようだ

とぎれとぎれの空がにぶく光り
黄金色の葉が小さくまわりながら
降ってきた
幹から水がしたたり落ちている
葉先からこぼれる一滴の水と
立ち並ぶ樹木の一本が
私に向かってしきりに話しかけてくる

聞き取ろうとして耳を澄ますけど
言葉が意味を結ばない世界
私にはまだ聞こえてこない

もっと耳をすますと
極細の雨が降りはじめた
しばらく雨が降り続くと
地面から透きとおった糸が
吹きあげているみたいだ
水蒸気が立ち上る真中に
一頭の白い馬があらわれた
馬は雨に濡れないで発光し
存在が静かに呼吸している

馬は私の方をじっと見ている
はるかな湖のような目が妙になつかしい
「こっちにおいで」と首を傾けながら
たてがみと長い尾がふっさりと揺れて
私は遠い未来の記憶を思い出す

樹木の間をすりぬけて走る
馬の示す方向に私も行ってみよう
私はまだどこにも帰りつけないまま
約束の場所を探し続ける

2010年2月22日月曜日

月~♪


 このところバンクーバーの雪と氷の世界に夢中になっていて、詩を入れるのを忘れていました~(*^_^*)春らしい暖かい日が続いていますね~♪
今日は、月の光を浴びて発芽する想いについて・・・ですよ♪

    「月」

月の光は
闇を小さく切り裂きながら
ちりちりと降ってくる
流れるのではなく
流されるように降ってくる

あふれるほどの月光の中では
みんなうらがえしになって
背中を見せているから
(光速なら追いつけるだろう)
夜空に置き忘れられた私の庭も
影が作った切ない輪郭
いちめん月の光に染まり
土の底まで浸みこんでいく

明け方には
私の庭のかたすみで
かたい土の表面が動きだす
かすかに震えながら
ひび割れた土のすきまから
銀色の芽があらわれて
しずかに風が吹く

月光を浴びて発芽した私の想い
(いつ埋めたのだろう)
細い茎は風にもつれながら
光に向かってしゅるしゅると
伸びていく

花はもう咲いているだろうか
通りがかった人々は
立ち止まって空を見上げ
「気が立ちのぼっていきますなあ」
と、何もない上空を
指さしている

2010年2月17日水曜日

初恋~♪


 「初恋」

いくつもの銀色の粒が
中空ではじけているような
ピアノの音が
空から降ってきたら
あの人があらわれる

影の国からやって来た
クールで孤独な転校生と
光の中をさっそうと歩く
新進気鋭の実業家

影と光はまざりあったり
はなれたりしながら
同じ人物の中をうごき
ピアノの音だけが記憶をつなぐ

迷った時にはいつも
ポラリスを探してごらん
とろけるほど美しい笑顔で
話しかけてくるので
私たちはいっせいに恋をした
笑ってしまう だけど本気

どんなことがあっても変わらない
何年たっても続く愛
現実にはありえないと知ったから
この恋がいっそう切実になる

とまどいやせつなさを
運んでくるピアノの響きと
空から降ってくる雪の輝き
見あげていたら
気持ちが軽くなっていった

どんどん軽くなって
天空を浮遊している雪片に
そっと入りこむ
雪の内部は意外とあたたかく
ふしぎな光に満ちていた

ここからまっしぐらに
あの人のところに降りそそぐ
すずやかな髪にとまり 指に触れ
いっきに心の中にすべりこむ
ただそれだけでいい

かなたから聞こえてくるソナタは
いつまでたっても同じメロディーを
くりかえしている

2010年2月12日金曜日

’新しい本)冬の人♪


     「冬の人」

冬の陽ざしを飲みこんで
ふくらんでいく日だまりの
つるりとした表面が
かすかに揺れ始めると
光のまん中から
ひとりの人があらわれた

長めのコートを着て
少しうつむいた人は
だまったまま近づいて
私の頭をなでてくれる

手の重さと感触の確かさで
体じゅうがあたたかい
あなたはいったい誰ですか
どこかで出会った気がするけれど
なかなか思い出せない

たくさんのシーンが現われて
記憶が増殖をくりかえすと
知りたかった謎が
目の前で解けていった

光の粒子の奥で眠っていた
その人が目を覚まし
私を包んでくれる
どうしても会いたいと
願った人と出会える冬
あなたは冬そのもの

上着のポケットの底から
折り紙の鳥を取り出すと
折りたたまれた光と影
宙できらめきながら
色とりどりの鳥の群れが
飛び立っていく

いっしょにみつめていると
私たち、地表から何センチか
浮かんでいる気がする
あたり一面チリチリと
立ちのぼる冷気の中で

2010年2月9日火曜日

窓 ♪


    「窓」

窓は光でできている
小さい窓も大きい窓も
どんな形の窓も
みんな光で作られている

外から内に向かって
投げかけられる日の光と
内から外に向かう心が
バッタリ出会う光のたまり場

淡い光や濃い光が
この場所でキュンと結晶して
垂直に立っている
窓いっぱいにはりめぐらされた
アンテナみたいな樹木の枝
小枝にからみつく青い空
洗濯したての白い雲

遠くまでくっきり見えている
風景のすみずみまで
光のつぶが反射しているだけの
幻影かもしれない

時間はまっずぐに流れない
何かにひっかかって
進むことも戻ることもできない
もどかしい日々

私の夢はどこに行ったのだろう
ふらっと出かけたまま帰ってこない
夢もこわれやすい素材で
つくられているから
窓の内側で眠っていると
私という存在も
実体のない幻だと気がついた

窓の内と外の区別は消えて
風が吹き抜けていった
世界は全部つながっている

夢の光を浴びている間だけ
時間は切実に動く

窓は光でできている
光は窓でできている
窓を開けなくても
すでに窓は開かれている

2010年2月5日金曜日

〇<第一詩集)春の鳥~♪


 「春の鳥」

鳥の羽ばたき音が
狂おしく
胸に分け入ってくる日
冬に封印されていた
空の遠くで 灯がともる

無数の精霊たちが
つめたい手をかざし
つま先立ちで踊りだすと
はりつめていた冬の糸は
ほころび始め
きざしを待つ人々の心で
たぐり寄せるように
こぼれ散る光

生まれたばかりの陽が
たどたどしい歩行で
地表をなでると
大地はゆるやかに
寝がえりをうち
ゆさぶられた人々は
空をあおぐ

鳥はいつも
ふいにやって来る
あてのない飛行ののち
夜明けの白い空に
飛びたっていく背後には
おびただしい色彩が流れ

ひかりの矢に射られた私は
視界をさえぎる扉を開き
無限につらなるものたちと
交信をする

2010年2月2日火曜日

〇'(第一詩集)異空へ♪


  今日は、平成22年2月2日ということで、2がいっぱい並んでる日です♪
何となく楽しいですね♪
ということは、22日はもっと楽しいのでしょうね♪(*^_^*)
今日も、不可思議な詩の世界へ出かけてみましょう!!
(なぜか、スナフキンさんの登場です~!!)

  「異空へ」

窓のかたちに縁どられたまま
うごかない冬の空
みつめていると
ふいに意識が深まって
ぽっかり空いた空洞に
すべり落ちていくのです

からだごとくるくるまわりながら
宇宙の芯に向かって落ちていく
落下は恐怖よりも諦観に近く
すとっと着地したら
知らない町が広がっていた

その町はいつも夕焼けに覆われていて
時が止まっていた
空いっぱいにこどくの音が鳴り響き
大きく脈を打っていた

たくさんの人が行き交う
乾いた歩道の上に
いちまいの切り紙が
風にあおられて飛んできた
魂を吸いとるという赤い切り紙
ヒトガタに切りぬかれた
紙の表面には

靴の跡がくっきりとついていた
(踏まれても
もう一度、風に舞うんだね)
人々の寂しい心を
いくつもいくつも吸いこんで
いっそう赤く輝きながら
夕焼けをかきわけて
消えていった

私は吸いとられた分量だけ
軽くなった魂を連れて
ふわりと宙に浮かび
意識の中をのぼっていく

2010年1月31日日曜日

駆けていく♪


  「駆けていく」

こわれかけた土塀が
朝の陽を吸いこんでいる
一瞬ごとに変化する雲の形と
照り返す光の量
土の香りが時の長さを告げる
欠けている安心感に
空間が急に広がった

隔てていたものは何だったのだろう
あの日見上げた空は
一直線に区切られてまっぷたつ
行き先が見えなくて
立ち止まってしまった

隔てていたものは
心が作りだした幻のて壁
私のおくびょうな気持ちが
土くれになって
積み重なり折り重なって
高くて丈夫な土塀をつくった

欠けていく期待感と
満ちてくる充実感に
風がどうっと吹きぬけて
私の内部から
まっさらな女の子が
飛び出して駈けてり行った

白いセーターに深緑のスカート
左手に常緑樹の小枝をにぎりしめ
踊るように走っていく

追いかけているものは
青空をくり抜いて作った
空色の風船
風に舞いながら
どこまでも飛び続ける
あこがれの心

もう何も遮るものがないので
まっすぐにあの人の心まで
駈けて行こう
陽だまりのなか
夢を見続けるために必要な
暗がりを求めながら


しかし、土塀って最近、珍しいですネ♪何かのイメージですね♪
「駈けて行く」と「欠けていく」は掛け言葉になっていますが・・。あはは・・。
全く関連のない言葉に、じつは真実が隠されてるみたいな気がして、急に思い立って書いたのです・・。ふむむ・・。実に哲学ですね♪なーんて!!(*^_^*)

2010年1月25日月曜日

あこがれ♪


  「あこがれ」

あの人は突然あらわれた
大陸の夢を身にまとい
白いスーツからあふれるほど
のびやかな風を持った
アジアの美しい青年は
照れたようなしぐさで
笑いながら手を振っていた

めぐる月や太陽といっしょに
ひとつの海を渡ってきた人よ
今、この季節のこの瞬間
私たちと同じ地平に立っている
ただそれだけのことなのに
深いまなざしに揺さぶられている

やわらかい顔のラインが
ゆっくりほどけていくたびに
あなたの内側から
見たことのない光がほとばしる
光はいくつもの波になって
輝きながら押し寄せてくる

心と呼んでいる空間の
まだ行ったことのない場所に
ひっそりとした湖があり
あなたの光の波が湖面に届くと
最初のさざ波が生まれる

さざ波はさわさわと広がって
国境をこえ、民族をこえ
無数の心とつながっていく

私たちは何を受けとったのだろう
大きな存在感にとまどいながら
名前も知らない人だったのに
ドラマの中に投げ込まれて
現実の恋人よりもっと切実に
あなたの視線に呼吸を合わせる
夢ではなく現実に
ずっと探していたのは
あなただったのかもしれない

明けきらない朝の空に
ムクゲの花が咲いて
静かな情熱を包みこんだ
あわい花びらが風にからまっている

ただよっている時間を連れて
つぎつぎに咲きそろっていく
はるかに続く連鎖反応

2010年1月22日金曜日

音色~♪


  「音色」

つめたい空気を切って
降りそそぐ冬の日ざし
全身にあびながら
青い舗道を歩いていると
手の先から少しずつ
透きとおっていく気がする

細胞のひとつひとつが
光のシャワーに洗われて
現われてくる大切なものだけを
たましいがかかえて歩く

冬の太陽に射られると
世界の本質が見えてくるらしい
街路樹の葉っぱたちは
みんな鳥の形をしている
さがしものがみつかりそうだ

テールコートを着た人が
奇妙なシルクハットを持って
向こうから歩いてきた

マジシャンかな
オーケストラの指揮の途中
抜け出してきたのかもしれない
銀色の音符がたくさん
空中を飛びまわっている

距離がどんどん近づいて
光の色が濃くなっていく
真っ白いウィンドカラーが
妙にまぶしい

すれちがった瞬間
恋におちてしまう予感がする
ありえないことが起きる
冬の午後のペーブメント

私の中に眠っている
まだ聞いたことのない音楽を
奏でてみたくなる

あなたの胸の内ポケットに
かくしているそのタクトを
一度、振ってくださいませんか

2010年1月20日水曜日

〇<第一詩集)夢の渓流


    「夢の渓流」


私は小さな水滴になって
いっしんに川をくだっていた

空を漂っていた日
ふと見下ろした大海の
めまいするような眩しさに
魅きこまれ
思いはつのるばかり
どうしても逢いたかったから
飛び降りてみたの
ほんの一瞬のことだった
私は今、水滴のひとつぶ
空の記憶を水面に伝えながら
木々の深い根もとを通り
玉砂利のすきまをくぐり
石の上をすべり

どこまでも
傾斜している
夢の渓流をたどっていく

押し流されて
命は前にすすむだけ
不安と期待がまじりあって
胸の鼓動は高まっていく

両岸に続く緑の葉群れの
狂ったような輝きに
ふうっと気が遠くなって
吸い込まれてしまった

途方もない時間を流れ
夜明けまでには 海へ
あの人の心の入口に
流れ込んでいく


☆雲の中の水蒸気は、もしかしたら海に恋をしてるのでは・・。
何だか、そういう気がしたので・・。
今日は、ちいさな水のひとしずくになって、海への旅をしてみました~♪

2010年1月17日日曜日

〇<第一詩集)冬の羊歯~♪


   「冬の羊歯」

冬の両腕にくるまっていると
どこからともなく
銀色のユニコーンがあらわれて
胸の中に住みついたりする

昨日、太古の森に迷い込む夢を見た
樹林はみずみずしい息をして
一度も視線を受けたことのない
妖しい緑の地衣類におおわれていた

踏みしめると 踝まで埋もれてしまう
すこしづつ うごいていく霧は
細かな玉になって髪に止まり
見あげると 光の棒がななめに降ってくる
影のない世界
心の跡がまだ見えない

いっとき意識界から遠ざかる
眠りのなかで
人は 原初にもどっていくのだろうか

さっき 宇宙船の窓の向こうに
なつかしい球形をつくる地球を見た
繭の色した陸地がおぼろに浮かぶ

窓いっぱいに広がっていくのは
羊歯の葉群れ
大陸は巨大な羊歯の形をしていた
入りくんだ海岸線や山脈のうねりは
美しい羽状複葉のライン
まるい惑星にしがみつき
シルル紀あたりを呼んでいるのか
時折ギラッと揺れて伸びあがる

地球もまた初めの日に
帰りたがっているのかもしれない

私の小さなユニコーン
夢の羊歯をもくもく食んで
ほどよく育っていくのだろう
今夜はなぜか心が熱い

2010年1月13日水曜日

〇’第一詩集)言葉


 今日は、すっごく寒いですね~♪寒いの大好き~と、いつも言ってるマイマイですが、この寒さには負けています♪


いくつかのイメージが浮かんできた時、それを捕まえて言葉に換えようと思うのですが、なかなか難しくって、もどかしいときもあります。そんな思いを書いてみました~♪言葉さんに向かって語りかけてる詩ですよ♪


    「言葉」


かすかな響きを追いかけて
地上のすみずみまで
探しまわっても
あなたの姿はみつからない


天の青さが極まると
はりつめた一点が溶けはじめ
空から声が降ってくる
(会いたい時には
階段を降りて行ってごらん)

どうしても会いたいと
願う心だけで
階段は目の前に出現し
みるみるうちに段数が増えていく
すとんすとんと
体ごと揺さぶられながら
今いる場所から
斜め前方に降りていく

どこまで行ったら
本当のあなたに出会えるのだろう
見えている世界から
一段ずつ遠ざかって

暗闇に吸い込まれるように
見えない領域に近づいていく
「もうすぐ
あなたにたどりつけるよ」

つらなる時間と空間の
わずかなすきまで
ひっそりと息づいている
気配だけ感じて

もどかしさにとまどいながら
ふと立ち止まる
階段の途中で
あなたの指先に
触れていることもある



2010年1月9日土曜日

●(新しい本)音魂♪


 音楽が聞こえてきたら、その音の響きから色彩が見えたり、光が現れたりすることって、ありますよね~♪昨年、和太鼓グループ「志多ら」のライブからインスピレーションを受けて作った作品です♪志多らは、2月からは、アメリカツアーが始まるそうです・・。今年は、西海岸ではなく、真中あたりかなー?アリゾナとかイリノイだったと思います・・。近くにお住まいの方、どうぞよろしくねっ!!


    「音魂」


まっ暗な闇の奥から
音が立ちのぼってきた
地面をたたく音なのか
天を駈ける音なのか
とどろくような音に合わせて
暗闇はほどけていく

いっきに明るくなった空気が
ふるえながら波になって
何度も押し寄せてくるので
わたしの心も揺れ始め
呼吸のリズムと重なっていった

太古の森からやってくるような
太鼓の響きはいさぎよく
エネルギーを飲み込んでは
大気に放出している
音魂が生きものみたいに
あたりを飛び交い走り回る

祭りばやしの太鼓をたたきながら
舞いおどる男たち女たち
神から託されたものを
無心になって伝えてくれる
巫女のように神主のように
神々しくほほ笑みあって

掛け声とともに連打の嵐
はげしく打ち鳴らす音を
全身で浴びていると
自分の中の不要なものが
どんどん消えていくのがわかる
音の波動に清められていく

からっぽになったころ
色彩が空から降ってきた
地から湧き上がってくる
色とりどりの光が渦巻いている

もう行き止まりだったのに
目の前に光の道があらわれた
どこにでも連なっている未知の道
音が光を連れてきたのだ



2010年1月6日水曜日

〇<第一詩集)冬野

 今日も、とても寒い日ですね。昼間は風が強く吹いていましたが、空がすごくきれいでした。風が吹いてるから、いっそう澄みきってくるのかな♪みつめていたら、このまま空に溶け込んでしまいそうなほど・・・・透明感のある空色でしたね~♪、昨日に続いて。今日も冬がテーマの詩ですョ~♪

    「冬野」
だれかに呼ばれている
気配がして
振り向くと
空につらなる
冬の原野

やわらかい銀の裾が
地上に触れると
心がほどけるように
目の前に広がって
永遠の方角に
のびていく

虫も人も動物も
まだ歩いていない大地です

雲を破ってそそぎこむ
ひかりに洗われて
草木は内部で熱く
萌えながら
影の素粒子たちと
ねむっている

遠ざかっていくものと
近づいてくるものが
交叉しながら
ひとつに溶け合って
ざわめきを秘めた沈黙は
いっそう深まっていく

耳をすますと
無数の呼吸音が
せりあがってきて
始まりの予感

大きく開いた空洞に
収まりきれない何かが
わたしを呼んでいる

圧倒的な冬の香りに
巻きこまれていると
出会ったことのない
すべてのことが
とてもいとしい

2010年1月5日火曜日

〇’第一詩集)冬の月夜♪

  「冬の月夜」
こちこちに凍った月の
青白くとがった光が
ひさしの上空から
さしこんでくる

空にころがっている月が
とても小さく見えたので
「さむいね」
と、声をかけてしまった
ガラス窓の向こうは
荒涼とした冬のひろがり

私もひとりぼっちで
冬の荒野をさまよっているのよ

机の上の地球儀は
いつも北極にうっすらと
ほこりを乗せて
すこし傾いている
まわしてみたら
地球儀はどんどんスピードをあげて
回転し始めた
(飛び散っていく輪郭)

ひとさし指で押さえると
経線と緯線のからみあった
海のまんなかに
落ちてしまった
つめたい海水に浸って
指先から凍えていく
(もどれるだろうか)

じゅうたんにすわって
ストーブに点火すると
反射鏡に赤い炎が咲き
にぎりしめていた硬い空気が
溶けていく

やわらかくなった月は
闇をふりほどいて
窓から遠ざかる

孤独とか切なさなんて
どこまで行っても
どこまで逃げても冬の胎内

見えない宇宙軸が
ときどき揺れるのは
こわれそうな心を
あたためながら
誰かが今も
地球を回しているのね

ほんの気まぐれに

2010年1月3日日曜日

〇’第一詩集)天啓~♪

 今朝は、昨夜の満月の光がまだ残っていて、朝日と混ざり合ってキラキラッ~と輝いているような朝でした。寒いけど、さわやかな冬の朝ですね~♪
なぜか、この詩が思い浮かんできたので書いておきます・・。

    「天啓」

雨上がりの庭に
まっ白いゾウが立っていた
ぬれた草を踏んで
清らかにそびえていた
(インドの祭りを抜け出して来たんだな)
ゾウの背中には
ひろびろとした青空が乗っていたが
ゾウが青空を包み込むほど大きかった

グレイの作業服の人が
けむりのようにあらわれて
にぶく光るちりとりを
右手に持ち替えながら
ゾウの中をご案内しましょう
と言った
東の空には、ホーキの跡が残っていた

しずかなゾウの目の奥で
朝の日光がはじけ
私はその中に吸いこまれていった

ゾウの体内はがらんどうで
ひなたのにおい
目をとじると
草穂が波になって
どこまでも広がっているのが見える
生まれる前から住んでいた
なつかしい場所だった

ゾウのとなりでは
もう一頭のゾウの影がゆれ
見えない存在の深さを感じながら
私はゾウにすっぽりくるまっている

いく日も
ゾウの内側にもたれて
おだやかな脈動を
全身で聞いていると
いつのまにかねむりこんでしまった

ねむりの向こうで
祭り日がつづいている

2010年1月2日土曜日

現代詩のページ


 今日から、現代詩のブログを始めることになりました~♪(笑)
一年の始まりの日なので、ちょうどいいかなー!!
ブログと言っても、今まで作った詩や作ったばかりの詩をとりまぜて、思いつくままに掲載してみようと思っています♪
どうぞお付き合いくださいね~♪
(絵は、パウル・クレーの作品など・・を使わせていただいています♪勝手にコラボさせていただいて申し訳ないですが・・。ちょっと貸してクレー! 
もし、絵画や造形作品など、ご参加いただける人がいらっしゃいましたら、お知らせくださいね♪待っています~♪)