2010年1月5日火曜日

〇’第一詩集)冬の月夜♪

  「冬の月夜」
こちこちに凍った月の
青白くとがった光が
ひさしの上空から
さしこんでくる

空にころがっている月が
とても小さく見えたので
「さむいね」
と、声をかけてしまった
ガラス窓の向こうは
荒涼とした冬のひろがり

私もひとりぼっちで
冬の荒野をさまよっているのよ

机の上の地球儀は
いつも北極にうっすらと
ほこりを乗せて
すこし傾いている
まわしてみたら
地球儀はどんどんスピードをあげて
回転し始めた
(飛び散っていく輪郭)

ひとさし指で押さえると
経線と緯線のからみあった
海のまんなかに
落ちてしまった
つめたい海水に浸って
指先から凍えていく
(もどれるだろうか)

じゅうたんにすわって
ストーブに点火すると
反射鏡に赤い炎が咲き
にぎりしめていた硬い空気が
溶けていく

やわらかくなった月は
闇をふりほどいて
窓から遠ざかる

孤独とか切なさなんて
どこまで行っても
どこまで逃げても冬の胎内

見えない宇宙軸が
ときどき揺れるのは
こわれそうな心を
あたためながら
誰かが今も
地球を回しているのね

ほんの気まぐれに

1 件のコメント:

  1. 冬の月は、人間の寂しいとか楽しいとかいう思いとは無関係に、煌々とそして淡々と照り輝いている様な気がするなぁ。そして人間をただじっと眺めている。

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