2010年2月12日金曜日

’新しい本)冬の人♪


     「冬の人」

冬の陽ざしを飲みこんで
ふくらんでいく日だまりの
つるりとした表面が
かすかに揺れ始めると
光のまん中から
ひとりの人があらわれた

長めのコートを着て
少しうつむいた人は
だまったまま近づいて
私の頭をなでてくれる

手の重さと感触の確かさで
体じゅうがあたたかい
あなたはいったい誰ですか
どこかで出会った気がするけれど
なかなか思い出せない

たくさんのシーンが現われて
記憶が増殖をくりかえすと
知りたかった謎が
目の前で解けていった

光の粒子の奥で眠っていた
その人が目を覚まし
私を包んでくれる
どうしても会いたいと
願った人と出会える冬
あなたは冬そのもの

上着のポケットの底から
折り紙の鳥を取り出すと
折りたたまれた光と影
宙できらめきながら
色とりどりの鳥の群れが
飛び立っていく

いっしょにみつめていると
私たち、地表から何センチか
浮かんでいる気がする
あたり一面チリチリと
立ちのぼる冷気の中で

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