2010年2月17日水曜日

初恋~♪


 「初恋」

いくつもの銀色の粒が
中空ではじけているような
ピアノの音が
空から降ってきたら
あの人があらわれる

影の国からやって来た
クールで孤独な転校生と
光の中をさっそうと歩く
新進気鋭の実業家

影と光はまざりあったり
はなれたりしながら
同じ人物の中をうごき
ピアノの音だけが記憶をつなぐ

迷った時にはいつも
ポラリスを探してごらん
とろけるほど美しい笑顔で
話しかけてくるので
私たちはいっせいに恋をした
笑ってしまう だけど本気

どんなことがあっても変わらない
何年たっても続く愛
現実にはありえないと知ったから
この恋がいっそう切実になる

とまどいやせつなさを
運んでくるピアノの響きと
空から降ってくる雪の輝き
見あげていたら
気持ちが軽くなっていった

どんどん軽くなって
天空を浮遊している雪片に
そっと入りこむ
雪の内部は意外とあたたかく
ふしぎな光に満ちていた

ここからまっしぐらに
あの人のところに降りそそぐ
すずやかな髪にとまり 指に触れ
いっきに心の中にすべりこむ
ただそれだけでいい

かなたから聞こえてくるソナタは
いつまでたっても同じメロディーを
くりかえしている

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