2018年4月6日金曜日

     「今」
未来に引っ張られている時は
過去からも引っ張られている
キーンと張り詰めた見えない糸は
どこまでも伸びて
私はちょうど真ん中あたりで
綱渡りしている

一歩踏み出すたびに
全身が大きく傾いて
世界中が揺れる

踏み外しても
青空に落下するだけだ
耳もとで風がごうっと鳴って
すべての音が消されていく
脈拍の波が押し寄せてくる
何もかもが不安になると
肩先が妙に寒いね
太陽を浴びた草の匂い

近くを見ることが怖くて
遠くばかり見ていたら
糸の細さが気にならなくなった
芽をつむるともっと遠くが見える
昼間なのに暗い空間
もう夜なのかもしれない

ふと立ち止まったら
光の束がいっせいに
私に向かって飛びこんできた
たくさんの色彩が重なり合って
私の中を白い光が
駆け抜ける

果てしなく遠い場所で
透明な水が湧き
白い滝になって落ち続け
月の光に照らされている

ほんのわずかな確率で
今、虹が出ている

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