2018年4月22日日曜日

糸の言葉

         「糸の言葉」

あざやかな色彩の糸が
リズミカルに並び
さまざまな形を作り出している
ミャオ族の刺繍展
不思議な模様の
しなやかな美しさに
引きこまれていく

布たちが呼吸している
と思った瞬間
詩集のあいだから
一匹の蝶がこぼれ出て
展示ケースを抜け出して
宙を舞い始めた

あちらからもこちらからも
たくさんの蝶が
飛び出してきて
無数の精霊を連れて
いっせいに乱舞している


光る粉がふりかかり
鱗粉に触れたなら
懐かしい場所に帰っていく

ミャオ族の最初の人は
蝶の卵から生まれたという

風の中できらめいている
光を探し求めて
風のすきまに
すべりこみながら
追いかけ続けた
あの日々

蝶の魂を宿し
宇宙に張り巡らされている
見えない糸を
たぐり寄せ染め上げて
伝えたい思いを
一針一針にこめて
刺していく

私は山麓の村に住み
涼風のなかで手仕事をしている
ミャオ民族の女になっていた

届けたい思い
あなたに届いていますか







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