2018年2月15日木曜日

ひなまつり

       「ひなまつり」

山いちめんに
桃の花が抱いて
青空にくるまれている
桃色の花あかり
内側から光を発し
花びらと空の境界線が溶けて
空いっぱいに広がった

見上げていると
どこかに紛れ込んでしまいそうだ

垂直に立っている
からかみを開けると
昼でもほの暗い座敷真の
片隅で小さなひなまつり

緋毛氈の階段に
おひなさまが並べられ
華やいでいる
未知の白と期待の赤が
混ざりあって生まれた
桃色の空間
人評たちは黙ったまま
時間を吸い込んでいる

障子を開けると
庭に集まっていた日光が
部屋に流れ込んでくる
畳の上に眩しい光の線が引かれ
光と影の境目を
わたしは行ったり来たり

もうすぐ五人囃子の音楽が始まるよ
三人官女が何か大切な物を
運んでくる

おひなさまとお内裏さまをは
これからどこへ行くの
見えない物語の続きが気にかかる

いつも何かが始まる直前
閉じ込めた時間が
あふれそうで
みんな桃の花色に染まるから

垂直に立っている
あのからかみを
そっと開けてみる







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