2018年2月10日土曜日

(新しい本)空を泳ぐ

       「空を泳ぐ」

夏空は海の匂い
まぅ青に広がる海原を
雲がどんどん動いていく
目で追いかけていると
急に心が誘われて
私は空を泳ぎ始める

空を思いきり吸い込んで
少しずつ吐き出しながら
両手をゆっくり伸ばし
風力を確かめながら
宙を泳ぐ

白い雲の波に乗って
かろやかに前へ
体にからみつく夏空は
とろりと濃く
太陽の粒を浮かべている

眼下を覆っている
陽光と山々の色を溶かし
いくつもの影と
人や鳥の声を飲みこんで
いっそう澄み切っていく
真夏の空

空気をめくりながら
進んでいくと
空はきれいな円を描く
光で作られた魚の群れを
追い越してスピードを上げる
雲の波をくぐるたびに
新しい風景が生まれる

夏空は揺れている
いつも不定形に
動き続けるから
迷い込むのにちょうど良い

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