2021年12月19日日曜日

夜空のココア

      「夜空のココア」


空のふちから

こぼれるほどの

冬の星たち

ぐるぐるまわると

とろとろとろけて

ココアの香り


夜空のポット

フーフー沸いて

流れてくるよ

私の黄色い

カップの中にも

ひかりキラキラ


夜空のココア

飲みほすたびに

さあ がんばろうと

元気が出てくる

ココアのドアなら

いつでも開く



2021年12月8日水曜日

短歌のコーナー2

      えつ子さんの短歌

平成27年短歌集より


北風は寒く師走の音と聞き

明日つく餅の米洗いおり


ビニールをめくりて玉ねぎの細き芽の

一本ずつに寒の肥ほどこす


梅が咲き水仙の咲きてまだ寒き

畑に草の起き上がりおり


借りて読む漫画なれども裸足のゲン

戦いの日々想い返しつつ


馬鈴薯の種芋届きて餓うる日を

暦に確かむ啓蟄近し


馬鈴薯の芽を確かめつつ切り分けて

三月近き土に埋めん


水澄て浅き流るる春の川

岸の菜の花黄の極まれり


伸びあがり花咲かんとする

菜花の蕾積みていただく


子燕の5羽の育ちて巣立つ朝

送る一羽に親燕の添う






2021年12月7日火曜日

短歌のコーナー

 えつ子さんの短歌コーナー

平成26年 年間歌集より


夕焼けに向かいて帰りのぺダル踏む

明日に続く空と思えり


にぎやかに年の数など言い合いて

節分の豆少しいただく


えんどうの垣結びゆく藁の香に

親しみつつも春まだ寒し


畑を打つ腰を伸ばさば昼の月

春浅き空に淡く紛るる


ひと鍬ずつ耕す畑に小鳥来て

親しげにおり虫探すらん


裸木の間に見ゆる白雲に

太陽が映ゆれば桜咲くごと


山深く峠の桜廃校の今も

村人に守られて咲く


春の泥匂う総出の川掃除

若者多く村活気づく


満月に財布かざせば

財うると聞けど月光ただ神々し


茹でかげん塩かげんよし枝豆に

日曜珍しく顔そろいたり




2021年12月1日水曜日

生まれたての言葉

   おはらとしこさんの詩の言葉は、とてもや

わらかで心地よいので、読み始めると心が

ほどけていくような気がします

生まれたばかりの言葉に、たった今、出会った

ような新鮮さが、おはらさんの詩の特徴だと

思います とてもみずみずしい世界なので

最初に出合った瞬間から、その不思議な世界観に

ひかれてしまいました 人(子供も大人も)や

物や風景に、暖かい視線を注がれていて、

独自の詩の世界を見せていただいています

そして、その詩の国の向こうには、広くて

深い世界が広がっている気がします

おはらとしこさんの作品の中から

「おやすみ ぶらんこ」「さくら さくら」

「かえりみち」三作品を選んでみました



まいました

2021年11月16日火曜日

なつ

     「なつ」


空の向こうが

ギラギラひかり

もくもくかいじゅう

あらわれた


まっ青な空

ばりばり食べて

どんどん大きく

ふくらんでいく


にゅうそう雲は

もくもくかいじゅう

まっ白い巨体が

こっちにくるよ


笑いころげて

はねまわるたび

あたりいちめん

バニラの香り


空と雲とを

味方につけて

ぼくらは夏の

まっただなか

2021年11月14日日曜日

ネジバナの階段

        ネジバナの階段


空の蕾を見つけるたびに

旅人の手のひらから広がっていく

幾千もの空の花

それぞれ違う空の下には

しじなでも続く平原

もしかしたら必然


地面から立ち上がる

ネジバナの形と色彩

光彩に映し出す


ネジバナの階段

のぼり始める決断

一歩ずつ足場をみつけ

右。斜めに上昇していく


下を向いたら落下

楽観しながら前を向く


花の配列に導かれるまま

進んでいくとくるり

くるくる回る螺旋階段

さっきと似たような風景なのに

風が濃くなってきた

花は散る いや散らない


からまってくる日常を

振りほどきながら

とまどいの多い日々

ひび割れないように

何度もねじれながらも

いっきに加速度あげて

遠い空をめざす旅


意識の仲では

難しいリズムで

踊りを踊る

宿る精霊

冷静な金星の方向へ


くるくる回っていると

心の螺旋と混ざり合ってくる

もう、どこからが空なのかわからない


未来の見えないこの世界の

まんなかにある平原で

さあさあと声かけあって

ねじれながらもつれながら

謎の階段をのぼっていく




2021年3月7日日曜日

雲のオルガン

         雲のオルガン


窓から聞こえる

ブーブカブー

あの子が弾いてる

オルガンの音

たのしい音色

心がはずむ


みどりの野原を

ブーブカブー

飛びこえながら

駆け抜けていく

ゆかいな音色

どこまで行くの


空から聞こえる

ブーブカブー

真っ白い雲

とんだりはねたり

いったい誰が

弾いてるのだろう


2021年2月20日土曜日

空と木と

      空と木と

見上げた空は

無心にひろがり

木々の枝がしなりながら

空を抱き上げていた


一瞬ごとに変わっていく

空の色彩と流動を

全部包み込んで

ゆるやかに立つ樹木


私も樹木のように

立ち上がってみよう

真っ青な空が

頭上で揺らめき始め


一点ギラっと光ったら

飛び散る青空の破片

私の胸に突き刺さる


固く閉ざしていたものが

するすると解けて

新しい世界が現れた


滞っていた時間が

しなやかな時の形に戻り

私の中を駆け巡る

「風が咲いたよ」


内側からこみあげてくる力

私は樹木の魂と同化していく


地面を踏みしめて

大きく背伸びしたら

内なる宇宙樹人連なっていく




2021年2月16日火曜日

ネコは春

 「ネコは春」


ネコはふわりと

あくびして

くるくるくるまり

おひるねしてる

アンモナイトは夢の中


ネコはひだまり

ひだまりはネコ


ネコはおおきく

あくびして

背中の上には

あおぞら光る

エジプトからの遠い道


ネコはうららか

うららかなネコ


ネコはしっぽを

ふりたてて

ゆらゆら揺らして

歩いてくるよ

私は春をだっこする



せn


2021年2月2日火曜日

気配

 気配


夕焼けになりそうな

気配に満ちた冬空から

ふいに受け取った小さいブーケ


透明なセロファンと

淡い紅色のラッピングペーパーに

くるくると包まれている


細いリボンをほどくと

植物の鮮烈な香り

部屋いっぱいに広がった


ま新しい水の宇宙に

とき放たれて

私の心も解れていく


きれいな炎になるつもりだった

グロリオサの花びらが

燃え上がりながら

染まったばかりの夕焼けに

突き刺さる


インカの遺跡の野原で

揺れていたアルストロメリア

風になりたかったのと

語りかけてくる


花のあいだを浮遊している

カスミソウは星の系譜

強く煌めくたびに

夕空に誘われて

立ち上っていく


花たちのエネルギーに惹きこまれて

私は時間からはぐれてしまう

気が付くと

いちめんの暗闇

 

夕焼けの後の暗闇は

澄み切っているから

忘れていた心の奥底まで

透けてしまう


私は、何になるつもり

だったのだろう