とても寒い朝です。寒がりやのミユがやっと起きて、カーテンをあけると、外はまっ白でした。夜のあいだに雪が降りつもっていたのです。庭の木や草も、うっすら雪をかぶっていました。とおくの山も何もかもがまっ白でキラキラひかっています。
「わーい 雪だ 雪だ!」
ミユは、うれしくてたまりません。おかあさんが朝ごはんを作っているあいだに、もう外に飛び出していました。雪が降りおわったあとのとてもきれいな青空です。
「おーい ミユ こっちだよ」
となりのユウくんが、いきなり雪の玉を投げてきました。雪の玉はミユの肩にあたってくだけまし
た。
「キャー ユウくんったら」
ミユも雪をあつめて雪玉を作って、ユウくんに投げつけました。しばらく雪合戦がつづいて、二人とも雪まみれです。おたがいの顔を見ながら大わらいしました。
「はやく学校に行きなさいよ」
ユウくんのお母さんの声がして、ユウくんは「じゃあな」と言って家に帰りました。
ミユは、きれいな雪をあつめて、小さな雪ウサギを作ってみました。そばにあったナンテンの実で目をつくり、葉っぱが耳になりました。とてもかわいい雪ウサギができあがりました。玄関の前の台の上に、そっと乗せてみました。それから学校に出かけて行きました。
さて、しいんとしずまりかえった雪の朝、通りにはだれもいません。白い道がどこまでもつづ
いています。ミユが作った雪ウサギは、お日さまの光がまぶしくて、目をさましたのです。
「なんだかわくわくするわ」
雪ウサギは、思いきってピョンと飛びはねてみました。台からころがり落ちましたが、ふわふわし
た雪の上でした。ピョンピョンとびあがってみました
雪ウサギは、たのしくなってしまいました。
「ちょっと走ってみようかな」
手足をぐーんとのばしてから、いっきに走りだしていました。まっ白い雪の道を、ピョンピョンかけ
ていきました。雪のつもった木々や屋根、どこまでもつづく雪の道……
何もかもがユキウサギにとって、はじめて見るものばかりです。あちこちに子どもたちの作った
雪だるまや雪ウサギが見えたので
「こんにちは」とあいさつしながら走りました。
しばらくすると野原に出ました。ちょうどそのとき、ビューンとつむじ風が吹いて、ユキウサギは
大空に舞いあがったのです。
「あれ~!!」
くるくるまわった次のしゅんかん、今度は、下に落ちていきました。ペラペラしたものの上に落ち
たのですが、少しやぶれてしまい、きれいな緑色の葉っぱが目の前にあったのです。
雪ウサギは、なぜかドキドキしました。
「ちょっと食べてみようかな」
思いきって緑色の葉っぱをかじってみました。
「おいしいっ!!」
雪ウサギは、こんなにおいしいものを食べたのは初めてだったのです。むちゅうになって何枚も
食べてしまいました。体の中がどんどんさわやかになりました。
「元気が出てきたわ、はやく帰らなくっちゃ」
まだ目がまわっていたので、どっちに向かったらいいのかよくわからなかったのですが、スズメ
たちが「こっちよ」「こっち」とおしえてくれました。
雪ウサギは、雪の道をいっしょうけんめいに走りました。そして、ミユの家にたどりつくことができ
ました。玄関の台の上に、ピョーンと飛びのったのです
近くにいた雪だるまたちが「おかえり」と言ってくれました。
しばらくすると、子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきました。ミユたちが学校から帰ってきたのです。ミユはまっさきに雪ウサギのところにかけよって、
「わぁ、良かった、まだとけてなかったわ」
とよろこびました。
雪ウサギは、ほんの少し体の中がすきとおっていました。
いっしょに見ていたユウくんが、
「あれ、この雪ウサギの口のところ、緑色になってるぞ」
ほんとうに雪ウサギの口のまわりは、きれいな緑色になっていました。
それに、背中には、葉っぱのかけらがくっついていたのです。
「これは、レタスかもしれないわ」
「わー! 雪ウサギがレタスを食ったんだ」
ユウくんは、はしゃいでいます。
でも、この近所にはレタス畑はなかったのです。となりのとなりの町には、ビニールハウスがあるので、「もしかしたら」とミユは思ったのですが……だまっていました。もちろん雪ウサギもだまったままです。
雪の日は、いつもとちょっとちがった風景の中、いつもとちょっとちがうこともおきるのかもしれません。
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