2017年5月31日水曜日

雪ウサギ

「 雪ウサギ」

 とても寒い朝です。寒がりやのミユがやっと起きて、カーテンをあけると、外はまっ白でした。夜のあいだに雪が降りつもっていたのです。庭の木や草も、うっすら雪をかぶっていました。とおくの山も何もかもがまっ白でキラキラひかっています。
「わーい 雪だ 雪だ!」
 ミユは、うれしくてたまりません。おかあさんが朝ごはんを作っているあいだに、もう外に飛び出していました。雪が降りおわったあとのとてもきれいな青空です。
「おーい ミユ こっちだよ」
 となりのユウくんが、いきなり雪の玉を投げてきました。雪の玉はミユの肩にあたってくだけまし
 た。  
「キャー ユウくんったら」
 ミユも雪をあつめて雪玉を作って、ユウくんに投げつけました。しばらく雪合戦がつづいて、二人とも雪まみれです。おたがいの顔を見ながら大わらいしました。
「はやく学校に行きなさいよ」
 ユウくんのお母さんの声がして、ユウくんは「じゃあな」と言って家に帰りました。
 ミユは、きれいな雪をあつめて、小さな雪ウサギを作ってみました。そばにあったナンテンの実で目をつくり、葉っぱが耳になりました。とてもかわいい雪ウサギができあがりました。玄関の前の台の上に、そっと乗せてみました。それから学校に出かけて行きました。

    さて、しいんとしずまりかえった雪の朝、通りにはだれもいません。白い道がどこまでもつづ          
  いています。ミユが作った雪ウサギは、お日さまの光がまぶしくて、目をさましたのです。
  「なんだかわくわくするわ」
  雪ウサギは、思いきってピョンと飛びはねてみました。台からころがり落ちましたが、ふわふわし
  た雪の上でした。ピョンピョンとびあがってみました            
  雪ウサギは、たのしくなってしまいました。
  「ちょっと走ってみようかな」
  手足をぐーんとのばしてから、いっきに走りだしていました。まっ白い雪の道を、ピョンピョンかけ
  ていきました。雪のつもった木々や屋根、どこまでもつづく雪の道……  
  何もかもがユキウサギにとって、はじめて見るものばかりです。あちこちに子どもたちの作った
  雪だるまや雪ウサギが見えたので     
  「こんにちは」とあいさつしながら走りました。
  しばらくすると野原に出ました。ちょうどそのとき、ビューンとつむじ風が吹いて、ユキウサギは
  大空に舞いあがったのです。
  「あれ~!!」
  くるくるまわった次のしゅんかん、今度は、下に落ちていきました。ペラペラしたものの上に落ち
  たのですが、少しやぶれてしまい、きれいな緑色の葉っぱが目の前にあったのです。      
  雪ウサギは、なぜかドキドキしました。
  「ちょっと食べてみようかな」
  思いきって緑色の葉っぱをかじってみました。
   「おいしいっ!!」
  雪ウサギは、こんなにおいしいものを食べたのは初めてだったのです。むちゅうになって何枚も
  食べてしまいました。体の中がどんどんさわやかになりました。
   「元気が出てきたわ、はやく帰らなくっちゃ」
  まだ目がまわっていたので、どっちに向かったらいいのかよくわからなかったのですが、スズメ
  たちが「こっちよ」「こっち」とおしえてくれました。  
  雪ウサギは、雪の道をいっしょうけんめいに走りました。そして、ミユの家にたどりつくことができ
  ました。玄関の台の上に、ピョーンと飛びのったのです
   
 近くにいた雪だるまたちが「おかえり」と言ってくれました。
しばらくすると、子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきました。ミユたちが学校から帰ってきたのです。ミユはまっさきに雪ウサギのところにかけよって、
「わぁ、良かった、まだとけてなかったわ」
 とよろこびました。
 雪ウサギは、ほんの少し体の中がすきとおっていました。
いっしょに見ていたユウくんが、
「あれ、この雪ウサギの口のところ、緑色になってるぞ」
 ほんとうに雪ウサギの口のまわりは、きれいな緑色になっていました。
それに、背中には、葉っぱのかけらがくっついていたのです。
「これは、レタスかもしれないわ」
「わー! 雪ウサギがレタスを食ったんだ」
 ユウくんは、はしゃいでいます。
 でも、この近所にはレタス畑はなかったのです。となりのとなりの町には、ビニールハウスがあるので、「もしかしたら」とミユは思ったのですが……だまっていました。もちろん雪ウサギもだまったままです。

 雪の日は、いつもとちょっとちがった風景の中、いつもとちょっとちがうこともおきるのかもしれません。

2017年5月16日火曜日

2017年5月20日土曜日

雪うさぎ

                  「 雪うさぎ」

とても寒い朝です。ミユがやっと起きて、カーテンをあけると、外はまっ白でした。夜のあいだに雪がふりつもっていたのです。庭の木や草も、うっすら雪をかぶっていました。とおくの山も何もかもがまっ白でキラキラひかっています。
「わーい 雪だ 雪だ!」
 ミユは、うれしくてたまりません。おかあさんが朝ごはんを作っているあいだに、もう外に飛び出していました。雪がふりおわったあとのきれいな青空です。
「おーい ミユ こっちだよ」
 となりのユウくんが、いきなり雪の玉を投げてきました。雪の玉はミユの肩にあたってくだけました。
「キャー ユウくんったら」
 ミユも雪をあつめて雪玉を作って、ユウくんに投げつけました。しばらく雪がっせんがつづいて、二人とも雪まみれです。おたがいの顔をみながら大わらいしました。
「はやく学校に行きなさいよ」
 ユウくんのお母さんの声がして、ユウくんは「じゃあな」と言って家に帰りました。
 ミユは、きれいな雪をあつめて、小さなユキウサギを作ってみました。そばにあったナンテンの実で目をつくり、葉っぱが耳になりました。とてもかわいいユキウサギができあがりました。玄関の前の台の上に、そっと乗せておきました。それから学校に出かけて行きましたる。・
 さて、しいんとしずまりかえった雪の朝、通りにはだれもいません。白い道がどこまでもつづいています。ミユが作ったユキウサギは、お日さまの光がまぶしくて、目をさましたのです。
「なんだかわくわくするわ」
 ユキウサギは、思いきってピョンと飛びはねてみました。台からころがり落ちましたが、ふわふわした雪の上でした。ピョンピョンとびあがってみました。ユキウサギは、たのしくなってしまいました。
「ちょっと走ってみようかな」
 手足をぐーんとのばしてから、いっきに走りだしていました。まっ白い雪の道を、ピョンピョンかけていきました。雪のつもった木々や屋根、どこまでもつづく雪の道……何もかもがユキウサギにとって、はじめて見るものばかりです。あちこちに子どもたちの作った雪だるまやユキウサギが見えたので、「こんにちは」とあいさつしながら走りました。
 しばらくすると野原に出ました。ちょうどそのとき、ビューンとつむじ風が吹いて、ユキウサギは大空に舞いあがったのです。
「あれ~!!」
 くるくるまわった次のしゅんかん、今度は、下に落ちていきました。ペラペラしたものの上に落ちたのですが、少しやぶれてしまい、きれいな緑色の葉っぱが目の前にあったのです。ユキウサギは、なぜかドキドキしました。「ちょっと食べてみようかな」
 思いきって緑色の葉っぱをかじってみました。
「おいしいっ!!」
 ユキウサギは、こんなにおいしいものを食べたのは初めてだったのです。むちゅうになって何枚も食べてしまいました。体の中がどんどんさわやかになりました。
「元気が出てきたわ、はやく帰らなくっちゃ」
 まだ目がまわっていたので、どっちに向かったらいいのかよくわからなかったのですが、スズメたちが「こっちよ」「こっち」とおしえてくれました。
 ユキウサギは、雪の道をいっしょうけんめいに走りました。そして、ミユの家にたどりつくことができました。玄関の台の上に、ピョーンと飛びのったのです。近くにいた雪だるまたちが「おかえり」と言ってくれました。
しばらくすると、子どもたちのにぎやかな声が聞こえてきました。ミユたちが学校から帰ってきたのです。ミユはまっさきにユキウサギのところにかけよって、
「わぁ、良かった、まだとけてなかったわ」
 とよろこびました。
 ユキウサギは、ほんの少し体の中がすきとおっていましたが、とてもかわいかったです。
いっしょに見ていたユウくんが、
「あれ、このユキウサギの口のとこ、緑色になってるぞ」
 ほんとうにユキウサギの口のまわりは、きれいな緑色になっていたし、背中には、葉っぱのかけらがくっついていたのです。
「これは、レタスかもしれないわ」
「わー! ユキウサギがレタスを食ったんだ」
 ユウくんは、はしゃいでいます。
 でも、この近所にはレタス畑はなかったのです。となりのとなりの町には、ビニールハウスがあるので、「もしかしたら」とミユは思ったのですが……だまっていました。もちろんユキウサギもだまったままです。
 雪の日は、いつもとちょっとちがった風景の中、いつもとちょっとちがうこともおきるのかもしれません。

2017年5月16日火曜日

光の方向へ

       「光の方向へ」


ギザギザの光を放つ球体が
地球の稜線に向かって
ころがり始めると
空いちめんに
淡い紅色の花が咲く

空の花が 満開になって
散らばったかと思うと
雲にからまったり はなれたり
変幻自在に動きながら
時空をいっきに超えていく瞬間

私はすぐにあの場所まで
飛んでいくよ

ガラス窓はどこまでも透明で
私の心は透けて見られているので
なにもかもが見抜かれてしまう

6階の西病棟の夕焼け時間
それぞれの痛みや不安をかかえた人々の思いで
窓ははちきれそうになっている
みんないっせいに
心を放出するんだね

私は夕陽といっしょに
くだけ散りながら
山の向こうの国々を旅したり
迷ったりして

明日になったらま新しい光を
身にまとって
きっとこの地点に帰ってくる
一日で再生するよ
新緑の朝を連れて戻ってくる

窓は垂直に立ったまま
すべての光を受け止めて
すべての思いを見つめながら
内と外をつなぎ
大きく深呼吸している