2011年12月3日土曜日

ココアの時間



「ココアの時間」


冬のよぞらを
ゆっくりめぐる
星のひかり
ながめていたら
さむい日だって
あたたかくなる

冬のよぞらを
カップにそそぎ
星のあかり
スプーンでまぜると
とてもおいしい
ココアができた

心の音色



「心の音色」


何か聞こえてくる気がして
じっと耳を澄ます
かすかな音色を探して
耳が透明になりかけた頃
音の気配のする方向に
すすんでいく

あなたが氷の上に立ち
しずかに踊りはじめると
いちめん青い海になった

ゆっくり近づくたびに
確信は高まって
スピードが増してくる
一瞬ごとに
とまどいが消えていく

白いシャツが青に染まり
あなたは澄みきった表情で
心のままに浮遊しながら
海色の中心を滑る

自分の呼吸と地球の呼吸が
かさなっていくと
音ははっきり聞こえてくる
その音色にみちびかれて
私たちは日々の波間を
ただ漂っている

無意識の海を踊りながら
しなやかに渡っていく
あなたは音色の化身
仕草のひとつひとつが
語りかけてくる
このままでいいのだよ
きっと大丈夫

2011年10月7日金曜日

●(新しい本)夢の迷路~♪

      「夢の迷路」

あけがたの夢の中で
道に迷ってしまった
帰りたいのに帰れない
いつもの道を通っていたのに
知らない町に立っている

今度のバスに乗ろうと
時刻表を見つめても
バスはなかなかやってこない
やっと来たと思ったら
行き先がちがっていた

見なれた階段を
かけのぼっていくと
コンクリートの長い廊下
どの部屋をのぞいてみても
私の入る教室がみつからない
私は何組だったのか

夢の道ばたで途方にくれる
今、目を覚ませば
私はここにいて
無事にたどりつけると
わかっているのに
夢の中にもどって
何かをさがし続ける

人は時間のかたすみに
いくつもの忘れ物を
置いてきているらしい
無意識の中でさがしている

完結できないまま
流れていくのが現実だから
とまどうことを
楽しんでいるようだ

ひまわり畑の迷路で
遊んでいるうちに
ほんとうに迷子になった
あの日の感覚に似て
不安だけど心が弾む
見あげると、まっ青な空に
大きな光の花びら

記憶だけでつながっている
果てしない道を今日も歩く

2011年7月10日日曜日

うちゅうにむちゅう

    「うちゅうにむちゅう」

そらののはらに
きれいにさいた
ほしのかがやき
みつめていると
うちゅうにあこがれ
まっさいちゅう

ほしのあかりを
ともしたのだれ
あんまりとおくて
せつなくなった
うちゅうのしんぴ
たんけんちゅう

せいざのかたち
さがしていたら
ふしぎなせかい
さそわれていく
うちゅうにむちゅう
いつもとちゅう

2011年3月29日火曜日

朝がくる♪

      「朝がくる」

星の光に清められて
くらやみの底が
ざわめきはじめ
今、何かが
生まれようとしている

いくえにも折りたたまれた
つぼみの深層が
急にはじけて
羽のような花びらが
起きあがってくる
いのちの旋律

金色の無数の芯を内包し
ちりちりとふくらんでいく
うすべに色の小惑星
あけぼのつばき

花は静かに発光している
フェルメールの窓から
さしこんでくる光に似て
淡いけれど確かな明かり

極限に近い闇の時でも
いつもと同じ表情で咲いた
変わらない愛を伝えるために
花は咲き 花宇宙はまわる

椿の中心に向かって
闇色が吸引され
のみこまれていく
徐々に消えていく夜

空いっぱいに
うすべに色の花びらを
まき散らしたような
あざやかな朝焼け
あけぼの光臨

2011年3月2日水曜日

恋するボールペン~♪

     「恋するボールペン」

ぼくは夢見るスケーター
青いスケート靴をはいて
まっ白い紙のうえを
どこまでも滑る
きみの思いを伝えるために

くるくるまわってジャンプ
こころもおどるステップ
ぼくのエッジから
ことばが生まれ
世界がどんどん広がっていく

ぼくと手をつないで
しっかり握りしめていて
熱い思いを受けとって
青いひかりに変えていく
ぼくは恋するスケーター

2011年1月23日日曜日

地球へ~♪


        「地球へ」


あなたと出会ったことが
ほんとうに良かったのか
どうだったのか
よくわからないまま時が過ぎ
わたしたち人類は
ここまでやって来ました

暗い宇宙にぽっかり浮かんだ
あなたの「姿」がとてもきれいだったので
おもわず見惚れてしまい
まっしぐらに駆け下りたのが
最初でした

あれから何十億年の日々が
動いたのでしょう
おたがいの存在を感じながら
楽しい日も苦しい日も
いっしょに過ごしてきました
心がつながって新しい大気を
作り出してきたのです

だけど、近頃のあなたの様子は
ちょっと気がかりです
酸素の量が足りないのでしょうか
心の位置が見えにくくなってきました
聞きたい言葉も聞こえてきません

もう行き止まりなのかもしれない
と、思いながらも歩きつづけ
断崖の上に立って眺めたとき
向こうには光る海が広がっていました

あの海には未来の時間が
溶けこんでいるのです
生命体の不思議をかかえ
わたしたちも行けるところまで
行ってみましょう

すべての出会いに歓喜し
全身でしっかり受けとめて
唯一無二の水の惑星の
無限と有限の真っただ中を
ゆっくりとつき抜けていきます

あなたと出会ったことが
良かったのかどうかなどと
問うことさえ忘れて

2011年1月18日火曜日

熱視線~♪

  これは既出の「氷上の4分30秒」の短いバージョンですが・・。一応、載せておきますネ♪


        「熱視線」


スケート靴を履いて
氷の上を滑りはじめると
顔にあたる風が心地良い
エッジで世界を感じている
(湧きあがる声援を全身で受けとめて
キミは澄み切った表情をしていた)

スピードをあげて滑走すると
ぼくの不安感や緊張感を
ブレードが切りさいて
氷上に新しい曲線を描く
一瞬ごとに自分の限界を超えていく
(キミは野生の動物の目をして
ひたむきに何かを追っている)

思いきり高く飛びあがって
宙に投げ出された独楽のように
キリキリと回転する
ジャンプが決まるたびに
拍手が波になって押し寄せてくる
(キミは翼を持った天使になって
軽々と空を飛びつづける)

氷がとけるほどの熱気の中
ぼくがステップを踏みだすと
つま先から音楽があふれ出す
(キミの情熱がほとばしる演技に
私たちは吸い込まれていく)

2011年1月11日火曜日

トキオ時計店~♪

  新しい年が始まって、10日過ぎました~♪今年のブログは、ここからスタートです♪さて、どんな作品をUPしようかなぁー?気分を換えて、ファンタジーを載せてみましょうね♪

     「トキオ時計店」

 なだらかにつづく山道は、もうすっかり落ち葉が積りつもり、秋の匂いでいっぱいです。葉っぱをふみしめながらゆっくり歩いていくと、きゅうに霧がたちこめてきました。霧の向こうに、丸太をかさねてつくった家がうっすらと見えてきますね。かんばんも何もありませんが、ここが有名な「トキオ時計店」です。木のドアを開けて、中に入ってみましょう。トキオさんは、丸メガネをかけて、青空のような色のシャツを着て、いっしょうけんめいに木を削っています。

 「こんにちは」と声をかけると、仕事の手をとめて、「やあ、いらっしゃい」とにこにこしながらむかえてくれました。目がとても澄んでいます。店の壁にも、ショーケースの中にも、ずらりと時計がならんでいます。クスノキ・ケヤキ・サクラ・クルミ・・・いろいろな種類の木を、星や月などの形に切って、長い針と短い針をつけただけの、とても素朴な時計ばかりです。木の目がとてもきれいなので、ひとつひとつ見ていると、時を忘れてしまいそうになります。「トキオさんの作った時計を持っていると、なんだか幸せな気分になるよ」ってみんなによろこばれていました。なかでも、目ざまし時計は、起きたい時間にセットしておくと、ふしぎなメロディーが鳴って、パッチリと目覚めることができます。「こんなにさわやかに目が覚めるのは、トキオ時計店の時計だけだよ」って、うわさが広がって、どんな遠いところからでも、お店を探して訪ねてくる人が多くなってきました。うわさはどんどんひろがっていきました。

 ある晴れた日の朝のことです。トキオさんが店をあけるまえに、掃除をしていると、窓から一匹のスズメが飛びこんできました。「あのーすみません」スズメはおどおどしながらも、かぼそい声で話しかけてきたのです。トキオさんはおどろいてしまいましたが・・スズメは羽をバタバタさせながらも、ひたむきな顔つきで話しはじめました。[朝、はやく起きることのできる時計を作ってくださいませんか」「ええっ? だってスズメさんたちは、はみんな早起きじゃないか」スズメは「はい、私たちは、だれよりも早く起きて、歌を歌いながら、朝をよんでくるのが仕事です。みんなによろこんでもらえるのが、楽しみなのです。ところが、最近、さんかく森の若者スズメたちが、、なかなか起きてこなくて・・・。朝がおそいぞぉ~ってたくさんの苦情がくるようになったのです」と、とっても困ったようすです。
「そういえば、最近、夜がなかなか明けないし、スズメの声が少ないような気がするね」トキオさんは、朝食のパンをスズメにすすめながら、しばらく考えこんでいましたが・・・。「よしっ じゃあ私の時計をつかってみてください」トキオさんは、時計に「朝」という文字を彫ってから、スズメに手渡しました。スズメはたいへん喜んで、時計を大事そうにもって帰っていきました。(この続きは、また明日~♪)