「夜空のココア」
空のふちから
こぼれるほどの
冬の星たち
ぐるぐるまわると
とろとろとろけて
ココアの香り
夜空のポット
フーフー沸いて
流れてくるよ
私の黄色い
カップの中にも
ひかりキラキラ
夜空のココア
飲みほすたびに
さあ がんばろうと
元気が出てくる
ココアのドアなら
いつでも開く
えつ子さんの短歌
平成27年短歌集より
北風は寒く師走の音と聞き
明日つく餅の米洗いおり
ビニールをめくりて玉ねぎの細き芽の
一本ずつに寒の肥ほどこす
梅が咲き水仙の咲きてまだ寒き
畑に草の起き上がりおり
借りて読む漫画なれども裸足のゲン
戦いの日々想い返しつつ
馬鈴薯の種芋届きて餓うる日を
暦に確かむ啓蟄近し
馬鈴薯の芽を確かめつつ切り分けて
三月近き土に埋めん
水澄て浅き流るる春の川
岸の菜の花黄の極まれり
伸びあがり花咲かんとする
菜花の蕾積みていただく
子燕の5羽の育ちて巣立つ朝
送る一羽に親燕の添う
えつ子さんの短歌コーナー
平成26年 年間歌集より
夕焼けに向かいて帰りのぺダル踏む
明日に続く空と思えり
にぎやかに年の数など言い合いて
節分の豆少しいただく
えんどうの垣結びゆく藁の香に
親しみつつも春まだ寒し
畑を打つ腰を伸ばさば昼の月
春浅き空に淡く紛るる
ひと鍬ずつ耕す畑に小鳥来て
親しげにおり虫探すらん
裸木の間に見ゆる白雲に
太陽が映ゆれば桜咲くごと
山深く峠の桜廃校の今も
村人に守られて咲く
春の泥匂う総出の川掃除
若者多く村活気づく
満月に財布かざせば
財うると聞けど月光ただ神々し
茹でかげん塩かげんよし枝豆に
日曜珍しく顔そろいたり
おはらとしこさんの詩の言葉は、とてもや
わらかで心地よいので、読み始めると心が
ほどけていくような気がします
生まれたばかりの言葉に、たった今、出会った
ような新鮮さが、おはらさんの詩の特徴だと
思います とてもみずみずしい世界なので
最初に出合った瞬間から、その不思議な世界観に
ひかれてしまいました 人(子供も大人も)や
物や風景に、暖かい視線を注がれていて、
独自の詩の世界を見せていただいています
そして、その詩の国の向こうには、広くて
深い世界が広がっている気がします
おはらとしこさんの作品の中から
「おやすみ ぶらんこ」「さくら さくら」
「かえりみち」三作品を選んでみました
まいました