空と木と
見上げた空は
無心にひろがり
木々の枝がしなりながら
空を抱き上げていた
一瞬ごとに変わっていく
空の色彩と流動を
全部包み込んで
ゆるやかに立つ樹木
私も樹木のように
立ち上がってみよう
真っ青な空が
頭上で揺らめき始め
一点ギラっと光ったら
飛び散る青空の破片
私の胸に突き刺さる
固く閉ざしていたものが
するすると解けて
新しい世界が現れた
滞っていた時間が
しなやかな時の形に戻り
私の中を駆け巡る
「風が咲いたよ」
内側からこみあげてくる力
私は樹木の魂と同化していく
地面を踏みしめて
大きく背伸びしたら
内なる宇宙樹人連なっていく
「ネコは春」
ネコはふわりと
あくびして
くるくるくるまり
おひるねしてる
アンモナイトは夢の中
ネコはひだまり
ひだまりはネコ
ネコはおおきく
あくびして
背中の上には
あおぞら光る
エジプトからの遠い道
ネコはうららか
うららかなネコ
ネコはしっぽを
ふりたてて
ゆらゆら揺らして
歩いてくるよ
私は春をだっこする
せn
気配
夕焼けになりそうな
気配に満ちた冬空から
ふいに受け取った小さいブーケ
透明なセロファンと
淡い紅色のラッピングペーパーに
くるくると包まれている
細いリボンをほどくと
植物の鮮烈な香り
部屋いっぱいに広がった
ま新しい水の宇宙に
とき放たれて
私の心も解れていく
きれいな炎になるつもりだった
グロリオサの花びらが
燃え上がりながら
染まったばかりの夕焼けに
突き刺さる
インカの遺跡の野原で
揺れていたアルストロメリア
風になりたかったのと
語りかけてくる
花のあいだを浮遊している
カスミソウは星の系譜
強く煌めくたびに
夕空に誘われて
立ち上っていく
花たちのエネルギーに惹きこまれて
私は時間からはぐれてしまう
気が付くと
いちめんの暗闇
夕焼けの後の暗闇は
澄み切っているから
忘れていた心の奥底まで
透けてしまう
私は、何になるつもり
だったのだろう