2010年9月30日木曜日

〇<第一詩集)秋祭り~♪

     「秋祭り」

あなたのことを
思い浮かべるたびに
まっ青な空が揺れて
どこか知らない所へ
つきぬけてしまいそうな秋の日

ぽつんと地上に立っていると
水晶の珠の内側に
まぎれれ込んでいるようだ
つややかな光りの虹が
いくすじもいくすじも
飛び散って
心の底まで洗われていく

燃えたつ稲穂が
いちめんに広がって
からだの芯まで
秋の匂いに染まる頃
かなたから太鼓の音が
近づいてくる

地面を這うように
低く短調に続く音は
太古から響いてくる
あなたの鼓動の音に
似ているね

はりつめた空気が緩んで
にぎやかな声がはじけ
稲穂に寄り添いながら
秋祭りの御神輿が
ゆっくり通っていく

(いつか三日月の残る朝
稲の花が咲いた
小さくて消え入りそうな花なのに
ふしぎな精気にあふれ
あわく光っていた
稲穂の神さまは
その花あかりを目印に
天からまっすぐに降りてきて
うすい花びらに
そっと触れる)

ゆさゆさと実った稲穂の道を
祭りのざわめきが通りすぎ
空に消えていくと
大地も夢も掃き清められ
金色のキリンが
通ったあとのようだ

2010年9月8日水曜日

’新しい本( クジラと出会った♪

    「クジラと出会った」

真夜中に目覚めると
波の音が聞こえた
海の近くでもないのに
海の匂いがして
うすい波がめくれては
押し寄せてくる

私の意識の入り口に
繰り返しぶつかって
中にすべりこんでくる

そこは深い海のなか
水がからまりあう音が
水底から響くシタールとタブラ
の連音ように高まっていると
音の向こうから
クジラの声が聞こえてきた

低くうねるような声に交じって
すみきった天使の口笛が
ゆらり立ちのぼってくる
クジラたちは愛の歌を
歌い始めたらしい

クジラは宇宙のエネルギーを
体じゅうに吸いこんで
泳ぐたびに
海の水にエネルギーを
転写しているという

ゆらぐ歌声を聞いていると
クジラが海を泳いでいるのか
海がクジラの周りを泳いでいるのか
わからなくなってきた

ふと気がつくと
クジラが私の名前を呼んでいる
もう何千年も前から
呼び続けているのに
どうして気がつかないのだ
クジラはぐるっと旋回して
こちらに向かってきた

月あかりが作った窓が
すうーっと開いて
窓枠すれすれに
クジラが入ってきた

私はクジラといっしょに
夜明けま近の空を飛びまわり
ふたたび海をめざしている