「空のピアニスト」
ちりちりと熱い天空に
まっ白い雲の鍵盤が
いちれつに並んでいる
黒い鍵盤は風の影
きりっと寄りそいながら
かなたまで続いている
空のピアニストは
しずかに一礼すると
山の峰に腰かけて
ピアノを弾きはじめる
指が触れたとたん
雲のピアノの最初の音
が鳴り響き
空のすきまに染みこむと
さざ波がおきる
音がつらなるたびに
波はどんどん広がっていく
音の波 波の音
ピアニストは
世界の感触をひとつひとつ
たしかめるように
指を動かしている
音と音のあいだに潜んでいる音
が謎を解くカギだから
十本の指がいきおいよく
走りだして
妖しいダンスのステップを
くりかえすと
雲は浮かんだり下がったり
空中に音楽が満ちてくる
音の波を受けとめている
大地の耳 耳の大地
地面はゆっくりほぐれていく
山脈はかすかに背伸びして
海や川をつくっている水面は
くすぐったくて身をよじる
空のピアノ曲が聞こえたら
自分が感受できる範囲を
ほんの少しはみ出して
人も自然もいっせいに
自在な感受の方向に
ころがっていく
2010年6月22日火曜日
2010年6月21日月曜日
2010年6月16日水曜日
2010年6月4日金曜日
〇(第一詩集)時のランナー~♪
「時のランナー」
「かけっこするひと
このゆびとまれ」
彼方から湧きあがる
神妙な声に誘われて
夜明けま近の空に
するするっと手を伸ばす
闇をあやつっていた星の群れは
とびとびに帰っていくらしい
指先にとまったトンボの軽さで
夜の底をくぐりぬけると
目の前にくっきり浮かぶ一本の線
(スタートラインはいつも真っ白)
朝日をあびた玉砂利は
天球につづく光なのか
頭の中でなにかがはじけて
硝煙の匂いが熱い
「もう ゆびきった」
白線からころがり出た私たちは
いっせいに走る
きゅっとかみしめていた
空がほどけ 地がほどけ
とりとめのない祈りの色が
じんじん広がってくるから
心臓の音は時への賛歌
一瞬の深みへ飛び込んでいく
地面を蹴るたびに
(こんな ちっぽけなことば)
(こんな ちっぽけなこころ)
古い呼吸のように投げすてる
右肩をかすめて
通り過ぎていく人たちの
背中のかたちを
目に映しながら
あのコーナーを曲がったところに
新しい夢が落ちているかもしれない
予感だけに満ちた
時のトラックを
今日も走る
「かけっこするひと
このゆびとまれ」
彼方から湧きあがる
神妙な声に誘われて
夜明けま近の空に
するするっと手を伸ばす
闇をあやつっていた星の群れは
とびとびに帰っていくらしい
指先にとまったトンボの軽さで
夜の底をくぐりぬけると
目の前にくっきり浮かぶ一本の線
(スタートラインはいつも真っ白)
朝日をあびた玉砂利は
天球につづく光なのか
頭の中でなにかがはじけて
硝煙の匂いが熱い
「もう ゆびきった」
白線からころがり出た私たちは
いっせいに走る
きゅっとかみしめていた
空がほどけ 地がほどけ
とりとめのない祈りの色が
じんじん広がってくるから
心臓の音は時への賛歌
一瞬の深みへ飛び込んでいく
地面を蹴るたびに
(こんな ちっぽけなことば)
(こんな ちっぽけなこころ)
古い呼吸のように投げすてる
右肩をかすめて
通り過ぎていく人たちの
背中のかたちを
目に映しながら
あのコーナーを曲がったところに
新しい夢が落ちているかもしれない
予感だけに満ちた
時のトラックを
今日も走る
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