2024年3月13日水曜日

命を運ぶ

          「命を運ぶ」


私たちは命を運んでいる

どこからやってきて

どこまで運ぼうとしているのか

誰も知らない


時間という船に乗って

揺れながらさまよっている

運んでいるものが

肩にくいこむほど重い日

飛び立ちそうなほど軽い時


若葉のように柔らかだったり

岩石のように硬かったり

どんな形をしているのか

誰も知らない


船はまっすぐに進まない

行ったり来たりを

繰り返しながら


うすい透明な波を

何枚も何枚もくぐり抜け

分厚い高い波をいくつもいくつも

乗り越えて進む


海のまん中で立ち止まってしまうこともある

瞬間を閉じ込めた海の色が

永遠の方角に広がっていく


空を見上げると

天空で渦巻いているものに

巻き込まれてしまいそうになる


両方の手の平を

合わせて祈りの形になると

その隙間からもれてくる光

あたり一面に広がっていく


大空からしたたり落ちてくる

言葉の雫を待っている

満ちてくるもの引いていくもの


私たちは命を運ぶ

何かに揺さぶられながら

いつも航海の真っただ中

果てのない旅が続く


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