2020年12月27日日曜日

        「天使と繋いだ手」「

        「天使と繋いだ手」を読んで


マリアはるなさんの柔らかい色調の絵が、たくさん散りばめられた新装版を読み始めています

2020年12月4日金曜日

連なっていく

       連なっていく


不安な時間が

どんどん膨らんで

うねりながら

こちらにやって来る

受け止めきれなくて

私はうずくまってしまった

時の残骸は散らばったまま


見上げた空は

無心にひろがり

樹木の枝がしなりながら

空を抱き上げていた

一瞬ごとに変わっていく

空の色彩と動き

全部包み込んで

ゆるやかに立つ樹木


私も樹木のように

立ち上がってみよう

敷き詰められた

真っ青な空が.

頭上で揺らめき始め

一点キラッと光ったら

飛び散る青空の破片

私の胸につきささる


固く閉ざしていたものが

するすると解け

新しい光が現れる

滞っていた時間が

しなやかな時の形にもどり

私の中にすべりこむ

体中を駆け巡る


内側からこみあげてくる力

私は樹木の魂と同化していく


私の枝先で

若葉が小さく揺れる

地面を踏みしめて

大きく背伸びをすると

内なる宇宙樹とつらなっていく











2020年5月5日火曜日

花火

       「花火」

私の思いが
どんどんふくらんで
あふれそうになったら
飛び出して行こう

闇をかきわけ
するする駈け上って
いっきに弾ける
思いっきり跳ねる

おう 来たな
あっつい あっつい
空はのけ反りながら
全身で受け止めている

とどろきわたる
音とひかり
大地も空も夢も
ゆさゆさ揺れている


夏の夜空には
たくさんの思いが
あっちでもこっちでも
大きく跳びはねている




2020年4月19日日曜日

もみじの銀河

        「もみじの銀河」

星のかたちの
まっ赤な葉っぱ
かさなりあって
さわさわ揺れる

秋のひかりを
ちりばめながら
どこから来たの
なぞの星たち

見あげると
ギザギザ青い空
おひさま透かして
もみじの銀河

深く息を
吸いこんだなら
宇宙がすこし
近づいてきた

2020年3月21日土曜日

2020年2月19日水曜日

糸の言葉 2020

          「糸の言葉」

鮮やかな色彩の糸が
リズミカルに並ぶ
ミャオ族の刺繍展
不思議な模様の美しさに
引き込まれていく

糸が呼吸しているわ
と思った瞬間
刺繍糸のあいだから
蝶がこぼれ
展示ケースを抜け出して
中空を舞い始めた

たくさんの蝶が
無数の精霊を連れて
いっせいに乱舞している
光る鱗粉に触れるたび
懐かしい場所に帰っていく

ミャオ族の最初の人は
蝶の卵から生まれたという

私は一匹お蝶になり
大気の中できらめいている
光源を探しながら
風のすきまに滑り込む

ミャオ族の女は調の魂を宿し
宇宙に張り巡らされた糸を
たぐり寄せながら
伝えたい気持ちを
一針一針にこめて刺していく

伝えたい思い
あなたに届いていますか


2020年2月5日水曜日

春だもん

       「春だもん」

まだ何の花も
咲いていないのに
どこからともなく
いい香りがして
吸い込んだら
わたし
花になる

つめたい風うけ
空の遠くを
みつめていたら
いっしゅんだけど
きらめく光
ぼくら
みつけたよ

心の奧から
何かが湧いて
ふわふわするよ
どこまでいけるか
ためしてみたい
みんな
春だもん




2020年1月10日金曜日

サクランボの妖精さん

「サクランボの妖精さん」

 マユコの家の庭のすみっこには、一本のサ
クランボの木があって、春になったら白っぽ
い花が咲きます土塀からのぞいる花を見て、通
りかかった人々は、「あれは、梅の花かなあ
?」とか「桜じゃないの?」などと言ってい
る。梅と桜の間ぐらいの時期に咲くので、紛
らわしみたいです。暖かい地方のサクランボなの
で、粒が小さくて、それほど甘くもないのだ
けど、五月になったら、真っ赤なサクランボ
がいっぱい実り、太陽を浴びて、キラキラと
輝き始めます。マユコはサクランボの実を見て
いると幸せな気持ちになるのでした。
 学校帰りの小学生たちも、ランドセルを背
負ったままったまま。「サクランボを見せて
くださーい」と言いながら,マユコの家の庭に
どんどんやってきます。ランドセルをテラスに
ポーンと置いて、ハシゴを登って、サクラン
ボの実を採ったり、土塀の上によじのぼって
サクランボの木に近づいたり・・・。「うわ
ーい、きれいだね」「すごくおいしいね」
サクランボの実る季節には、毎日のように、
子供たちの歓声で、小さい庭がいっぱいにな
ります。中学生のマユコも一緒になってはし
ゃいでしまいます。

  ある夜のこと。マユコが宿題を終えて、窓
の方をふと見ると、カーテンのすきまが,ボ
ーッと明るいことに気が付いたのです。
「あれっ いったい何だろう?」マユコはそ
っと窓に近づいて、少しだけカーテンを開け
てみました。「ちょうどサクランボの木のあ
たりが光っているようだわ」マユコはちょっ
と怖かったのですが、その不思議な光を見て
いるうちに、何だかあたたかな気持ちになっ
てきたのです。しばらく、その光をみつめて
いると、光がこちらにやってくるような気が
したので、驚きました。「ああーどうしまし
ましょう」
 光が強くなって、、ゆっくりと回り始め、
その真ん中には、とても小さな女の子が立っ
ていたのです。まっ赤なドレスを着た、お姫
さまのように見えました。その小さい姫さま
が、何茂も手招きするので、マユコは急いで
で窓を開けました。そのとたんにピョンと飛
んで来た女の子は。小鳥のような声で「
こんばんは」と言いました。キラキラ光って
いる小さくてまあるい顔が、サクランボそっ
くりだったので 「もしかしたら、サクラン
ボのお姫さまですか?」と尋ねると こっく
りとうなずいてくれました。

 一本のサクランボの木ごとに宿っていると
というサクランボの妖精、伝説のサクランボ
姫に出会えたなんて、マユコは、うれしくて
たまりません。
 でも、サクランボ姫は、すこし困ったよ
うな表情で、「あのー すみません いつも
私といっしょに居た双子の妹が、夕暮れから
いなくなってしまって、みつからないのです
けど・・」と言ったのです。今日は、サクラ
ンボのまわりに子供たちがたくさん来ていて
はねまわっていましたから・・。「もしかし
たら」とマユコは思いました。「ちょっと待
っててね」とサクランボ姫に言って、部屋の
中をぐるっと見わたしてから、すみっこまで
探してみました。
 すると、マユコのベッドの下で小さく光っ
ているものをみつけたのです。のぞきこみな
がら、「サクランボ姫さまですか?」と声を
かけると、ゆっくりところがりながら、真っ
赤なサクランボが出てきました。
高い所にある小さな窓を、開けたままにして
いたようで、きっとそこからピョンと飛びこ
んだのでしょう。
「ここでねむってしまっていたみたい」姫は
「あーあ」 とあくびしながら立っています。
 探しに来ていたお姉さんは、半分、泣きそ
うになりながら、妹をギュッと抱きしめまし
た。二人が手をつなぐと、光が何倍に広がっ
て、とても眩しかったのです。
 「みつけてくださって、ほんとうにどうも
ありがとうございます。とても。うれしいで
す。お礼に何かプレゼントたいのですが、何
がいいでしょうか?」
マユコは欲しいものは何もなかったのですが
昨日、友だちのミキとけんかしたことを思い
出しましたので、「仲直りできるおまじない
を教えてくれませんか」と頼みました
 サクランボの双子の姫君は、ふたりそ声を
そろえて「サクラクラクラウランボ―アナタ
トナカヨクナリタイノデス」と教えてくれま
した。「笑顔で言ってくださいね」と言い終
わるとすぐに、光が窓から出て。スーと高く
飛んで行きました。サクランボの木の上で、
二つの光が踊っています。

 マユコは、次の日、学校に行ってミキに
会った時、すぐに、昨日、教えてもらった
おまじないを言ってみました 
「サクラサクサク・・・・・あれっ? 何
だっけ?」サクランボの姫さまたちの可愛
い顔と声を思う出して、もう一度、「サク
ラサクサクサクランボアナタトナカヨクナ
カヨクナリタイノデス」ニコニコ笑顔で言
いました。ミキもニコッと笑って。すぐに
仲直りできました。
サクランボ絵に出会ったことは、ないしょで


マユコの家の庭のすみっこには、一本のサク
ランボの木があって、木のてっぺんには、可
愛い双子の姉妹が居るなんて、わくわくする
ほどうれしい気分になります