2019年6月20日木曜日

浜辺

    浜辺

まだ海が見えないのに
潮の匂いがする
狭い路地をすり抜けると
急に視界が広がって
私は浜辺に立っていた

がらんどうのような空と
満ちている海
空と海はどこまで行っても
交わらないまま対面し続け
たくさんの時を飲みこんでいる

浜辺には未来から来たのか
過去から蘇ったのかわからない
大きな謎の物体が立ち
何百本もの細い骨格と
白い帆を持つ
海辺の生き物が
やわらかい砂の上で
何かを待っていた

「風が来たよ」
風が吹き始めると
空と海をいっしょに連れて
ストランドビーストは静かに動き出す
パイプの一本一本が
細胞になって呼吸し
浜辺を歩き始める
海面上昇していないか
見極めるため
風を食べて動き続ける
新しい生命体

テオ・ヤンセンの作品
ストランドビーストが
今。私の目の前を動いている
芸術と科学がつながって
海と空を波立たせながら
どこに向かっていくのだろう


私も新しい風を受けて
歩き始める
いつも海から始まる





2019年6月11日火曜日

雨ガッパのうた

       「雨ガッパのうた」

雨の日には
カッパになるの
雨つぶいっぱい
あびながら
びしょぬれの道
あるいてく

私はきいろ
あの子はみどり
いろとりどりの
カッパのなかま
カッパの声で
笑いあう

雨がふったら
お花もえがお
おいしい水を
のみながら
カッパのパレード
見てるから