2019年11月9日土曜日

公園の夕暮れ

        「風の滑り台」


風の階段をみつけて
一段一段のぼっていくと
ふいに高い台に立っていた
見渡すと木々の枝が空に溶け込みそうに
すがれていて

足元がしんしんするわ

小さく息を吐いたら
スカートのすそを
気にしながら
向こう側に
いっきに滑り降りてみる
落下する快感

いつも何かを探している
思いを振りほどきながら
ただ下降していく

地面に足が着いたら
すぐに立ち上がり
もう一度、階段をのぼる
風のすべり台はエンドレス

秘儀のように黙ったま
何度も何度も繰り返すと
あたりは、急に薄暗くなって
さっきまで遊んでいた
子供たちが誰もいない
風の音が聞こえるさけ

私も もう帰ろうかな
歩き出して振り向くと
古い樹木と錆びた金属の匂い


大きな軌道を
描き続けるブランコ
バランスを保ったまま
中空を滑っているシーシー

星明かりだけの
公園の遊具たちは
地上から少し浮かんで
ゆっくりと回り始めた
















2019年10月18日金曜日

いつもとなりに

「いつもとなりに」

星と星をつないで作る
星座の世界
夜空にお絵かき
しているみたい

描いてるうちに
楽しくなるよ


星のひかりを
見つけるたびに
こころの中にも
明かりが灯る


オリオン座の
ペテルギウス
こいぬ座の
プロキオン
おおいぬ座の
シリウス

三つつなぐと
冬の大三角形

ふたご座の
カストルとポルックスは
いつもとなりに



2019年10月2日水曜日

りんごのウサギ

     「りんごのウサギ」

ママが作った
りんごのウサギ
まっ赤なお耳が
ピーンとながい

おさらの上に
ならんだウサギ
キラキラお目めで
わたしを見てる

りんごのウサギ
ウサギのりんご
かわいいかたち
美味しい匂い

さあ、食べよう
手を伸ばしたら
ウサギはピョンと
窓から飛んで

りんごのウサギは
ピョンピョンはねて
雪ののはらを
走っていくよ



2019年6月20日木曜日

浜辺

    浜辺

まだ海が見えないのに
潮の匂いがする
狭い路地をすり抜けると
急に視界が広がって
私は浜辺に立っていた

がらんどうのような空と
満ちている海
空と海はどこまで行っても
交わらないまま対面し続け
たくさんの時を飲みこんでいる

浜辺には未来から来たのか
過去から蘇ったのかわからない
大きな謎の物体が立ち
何百本もの細い骨格と
白い帆を持つ
海辺の生き物が
やわらかい砂の上で
何かを待っていた

「風が来たよ」
風が吹き始めると
空と海をいっしょに連れて
ストランドビーストは静かに動き出す
パイプの一本一本が
細胞になって呼吸し
浜辺を歩き始める
海面上昇していないか
見極めるため
風を食べて動き続ける
新しい生命体

テオ・ヤンセンの作品
ストランドビーストが
今。私の目の前を動いている
芸術と科学がつながって
海と空を波立たせながら
どこに向かっていくのだろう


私も新しい風を受けて
歩き始める
いつも海から始まる





2019年6月11日火曜日

雨ガッパのうた

       「雨ガッパのうた」

雨の日には
カッパになるの
雨つぶいっぱい
あびながら
びしょぬれの道
あるいてく

私はきいろ
あの子はみどり
いろとりどりの
カッパのなかま
カッパの声で
笑いあう

雨がふったら
お花もえがお
おいしい水を
のみながら
カッパのパレード
見てるから


2019年2月22日金曜日

みつけたよ

     「みつけたよ」

たんぽぽ ぽぽぽ
咲いてる道を
さがしに行こう
春の午後

なのはな ななな
あかるい野原
夢の向こうに
さそわれる

春の始めの
黄色いひかり
飛びはねながら
花になる

すいせん びおら
ろうばい ぱんじー
たんぽぽ ららら
みつけたよ