2016年12月15日木曜日

’新しい本)冬の銀河の片隅で

 「冬の銀河の片隅で」
あなたに会いに行く日は
いつも寒い日だった
記憶の風景は決まって冬
北風に背中を押され
熱い思いだけ握りしめて

気持ちが前に前に進むので
転がりそうになりながら
待ち合わせの場所に向かう
現実の世界は
もう閉じられていて
私たちの居場所はなかったのに
どうしても会いたかった

街の雑踏を抜けると
ビルの形に阻まれていた空が
急に広がった
濃い紫色の広大な天空を
半透明な霧が走る

冬の銀河の片隅で
凍えそうになりながら
歩いていると
星の光が冷風に乗って
したたり落ちてきた

無数の星がともっていて
光の窓が開くたびに
空が抜けて通路が出来る
星はどこにでも行ける入り口になった

世界はまだ閉ざされていない
あふれるほどの光の量に
見守られている

星をつないで
星座を作っていくと
一角獣やオリオンやキリンたちが
空を縦横無尽に飛び交い始めた

あの日、待ち合わせの時間に
たどり着けたのか
間に合わなかったのか
私たちの物語は
まだ完結していない

今も、寒い日には
あの待ち合わせの場所に向かう
いつも向かっている途中だ

2016年10月20日木曜日

うろこ雲

      「うろこ雲」

空が大きくふくらんで
どこまでも広がっていく
真っ青な世界
はちきれそうになった頃

秋の天使が
いっせいに駈けていく
かろやかな足音と
かろやかな笑い声を
響かせながら

空いちめんに
白くて小さな
足跡が
ぽっかりふわふわ
浮かんでいる

今日は
秋の天使の運動会

2016年10月14日金曜日

風と走ろう

    「風と走ろう」

風のうでに
手を伸ばし
風といっしょに走ろう
おいで北風
どこまでもついていくよ
ゴールを目指して
走っていこう

風のパワー
受け止めて
髪なびかせて走ろう
行こう北風
前に前に進むんだ
大地に足音
響かせながら

青い空に
見守られて
走り続けるぼくたち
光れ北風
風景も飛び跳ねてる
地球のリズムに
合わせて走る





2016年8月30日火曜日

’新しい本)もっと遠くへ

    「もっと遠くへ」

土手道に自転車を停めて
とろとろっと降りていくと
なつかしい水の匂い
乱反射している水面を
みつめていると

草むらから弾ける音がして
風が走り
鮮やかな蝶々が
ゆっくり飛翔する

時空が変化する瞬間
心は清められていく
川は太古から流れてきて
未来に向かっているのか

いつもの風景なのに
初めて訪れた場所のように
みずみずしく光っている
ここはどこの惑星なのだろう

ほんの少し移動しただけで
はるかな異空になる

あなたが見守ってくださるから
私たちは安心して進んで行ける

地面から湧き上がる
新緑の勢いと
あなたの視線に
押し上げられて

もう一度
坂道を登って
もっと遠くまで行ってみよう
未知の言葉の世界へ

2016年7月22日金曜日

●糸の言葉

         「糸の言葉」

鮮やかな色の糸が
リズミカルに並び
さまざまな形を作り出している
ミャオ族の刺繍展
不思議な模様の
しなやかな美しさに
引き込まれていく

布が呼吸している
と思った瞬間
刺繍糸のあいだから
一匹の蝶々がこぼれ出て
展示ケースを抜け出して
宙を舞い始めた

あちらからもこちらからも
たくさんの蝶々が
飛び出して
無数の精霊を連れて
いっせいに乱舞している

光る粉が降り注ぐ
鱗粉に触れたら
懐かしい場所にあいだ帰っていく

ミャオ族の最初ん人は
蝶々の卵から
生まれたという

風の中できらめいている
ひかりを探し求めて
風のすきまに
すべりこみながら
追いかけ続けた
あの日々

蝶々の魂を宿し
宇宙に張り巡らされている
見えない糸を
たぐり寄せ染め上げて
伝えたい思いを
一針一針にこめて
刺していく

私は山麓の村に住み
涼風の中で手仕事をしている
ミャオ族の女になっていた

届けたかった思い
あなたに届いていますか



2016年7月21日木曜日

2016年7月6日水曜日

もっと遠くへ

  「もっと遠くへ」

土手道に自転車を停めて
とろとろっと降りていくと
なつかしい水の匂い
乱反射している水面を
みつめていると

草むらから弾ける音がして
風が走り
鮮やかな蝶がゆっくり飛翔する

時空が変化する瞬間
心は清められていく
川は太古から流れてきて
未来に向かっているのか

いつもの風景なのに
初めて訪れた場所のように
みずみずしく光っている
ここはどこの惑星だろう

ほんの少し移動しただけで
はるかな異空になる

あなたが見守ってくださるから
私たちは安心して進んで行ける

地面から湧き上がる
新緑の勢いと
あなたの視線に
押し上げられて

もう一度
坂道をのぼって
もっと遠くまで行ってみよう
未知の言葉の世界へ


2016年6月26日日曜日

ひまわり

      「ひまわり」

いちめんのひまわり
金銀に光り
どこまでも続く
真夏のパッション

太陽に恋をして
身を焦がしても
まっすぐに立ち
想いを伝える

ひまわりの目を
みつめていると
吸い込まれていく
知らない国へ

ひまわりの迷路
出口は無用

◎ひまわりを見上げると青極まれり
◎夏の海恋の足あと残る浜
◎セミの声麦わら帽子に手を伸ばす

2016年6月23日木曜日

夏のパラダイス

          〈夏のパラダイス」

シュラシュラと
降りそそぐ
まっ白い雪
ふりつもって
キラキラ輝く
雪山ができた

チュルチュルと
舞い降りる
赤黄緑の
あまいベール
あざやかな夏の
かき氷パワー

キュンキュンと
浸みてくる
口に運ぶたび
体じゅうに
涼しい風吹く
夏のパラダイス



2016年5月12日木曜日

’新しい本)あかり

    「あかり」

闇にくるまって
空を見ていたら
やさしいあかりと
出会ったの
みつめていると
あかるくなって
空いっぱいに
星のむれ
金色のひかりが
降りそそぐ

星のひかりを
あびていたら
宇宙の神秘に
ひきこまれ
ふしぎな力が
わいてくる

心の中にも
金色のあかり
まわりの闇が
とけていった

星をつないで
星座のロマン
夜空を自在に
駆けめぐる
星色の流れに
まきこまれ
きっとあなたと
出会えそう
みんな誰かと
つながっている























2016年2月6日土曜日

冬の空いろ

        「冬の空いろ」

とろけそうな冬の空
淡い青がるうるうと広がって
大気圏の彼方まで
透けて見わたせるほど
すきとおっている

銀河の向こうから
飛来した光のひとひらが
神々しい雲になって
ぽうっと漂っている

今にもこぼれそうな心を
どんどん掬い取って
膨らんだりちぎれたりしながら
濾過しているのか
光の粉が降っている

春の花の香りを内包して
もうすぐ弾けそうだ

木の枝先がするすると伸びて
雲をつかまえようとするけれど
雲は自在に姿を変えて
するりとくぐりぬけていく

たとえ昨日と明日が
心細い日であったとしても
今日、この瞬間だけは
時間や質量の法則から
解き放たれている

この冬の空のどこかに
不思議な通路があって
いろいろな意識を吸い込んだり
吐き出しているらしい

伸びやかに広がる
ペールブルーの冬の空
見つめているだけで
どんな窮地も脱出できる
どんなの問題も
すり抜けられる気がする

心の静寂が極まって
空の呼吸の音さえ
聞こえてくるよ





2016年2月5日金曜日

つぼみは春の光の子ども

  「つぼみ」

サクラもモモも
モクレンも
今はみんなつぼみです
ちいさくとがった
ひかりの子ども
ねむっているの
いいえ これから飛び出す
準備中

つぼみの中は
あたたかく
ほんの少し広がって
お日さま見えたら
はじけるの
こわくはないの
いいえ 新しい世界
わくわくしてる

サクラもモモも
モクレンも
今はみんなひかりです
つぼみのまわり
ひかりであふれ
まぶしくなった
つぼみは春の
ひかりの子ども