「鳥のようなもの」
不確かな方角から
一羽の鳥が
私の視界に飛び込んできた
ケヤキに吸い寄せられるように
近づいてきて止まり
小枝を揺らせながら
幹をついばみ空をついばみ
遠くを見ている
鳥の視線は光を放つ
唐突に空気が弾かれる
高い声で鳴き始めると
声はまっすぐ駈け上り
空にぶつかっては跳ね返り
鮮やかな色彩を発している
受け取った鳥たちが
あちらこちらから返事を交わすので
天空は鳥の言葉と
色とりどりの色彩が満ちる
鳥の伸びやかさと
鳥の体温ほどの
温かな明りが
私の内部に宿る頃
空全体が鳥の形になって
大きな翼を広げて
羽ばたき始め
得体のしれないものを
抱えたまま
飛び立って行く
次の空間に向かって
全速力で飛んでいく
地球と同じ速度で
飛び続ける
いつのまにか
私は鳥と同化して
飛んでみる
今も、何かに向かって
たぶん飛んでいる