2013年7月31日水曜日

青い樹木

        「青い樹木」

夜の雨音を聞いていると
漆黒の闇の中を
銀色に光りながら
落下し続ける
無数の水滴と同化して
遥かな空とつながってくる

雨の通路をたどりながら
ねむっていると
夢にすべりこむ直前に
青い樹木が立っているのを
見かけることがある

るりるりと光っている
青い樹木は
緑の木々のあいだから
唐突にあらわれて
一瞬で心に飛び込んでくる

樹木に吸引されるように
近づいていくと
今日の自分が抱えているものが
浮かび上がって見えてくる
いつのまにか凍りつくほど
凝縮していた緊張感が
とろとろと溶けていく
からみあったまま
固まっていたものが
するすると解けていく

人は皆、一本の青い樹木を
心の中で育てている
枝葉がそよぐたびに
原初の存在に
戻っていける

雨あがりの朝には
自転車に乗って
あの青い樹木を探しにいこう
カラマツ林のなか
涼しい風を受けながら
地面に残っている
雨の雫を飛びこえて
夢の続きを追いかける

リアルと非リアルは
つながっているから
自在に行き来しながら
夢を超える


1 件のコメント:

  1. 青い樹木って、命の木のことなのかな。普段自分という意識に邪魔されていて自分の中にある青い樹に気づかない。それがアダムとイヴが罪を犯さないまえの原初の姿っていうことなのかな。一見非リアルな空想の世界に思えるけど、超リアルな世界でもある。そんな気がする。

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