2013年11月28日木曜日

朝の風景

「朝の風景」

世界のどこかで
艶のある闇色のタマゴから
フワッと飛び出す朝の光
生まれたての光は
眩しいエネルギーの源
膨大な量に増殖して
何億もの窓に
押し寄せてくるから
ガラス窓は膨張して
大きくしなり
部屋の中まで風景が
なだれこんでくる

私は静かに受け止めて
ゆっくりと元の場所にもどす
山の位置 空の位置 自分の位置
カチッと嵌った時
無音だった風景が
新しい今日の音楽を
奏で始める
まっすぐ伸びる視線
さえぎるものがないから
聞いたことのない旋律が
響きわたり体内にこだまする

今日はどこまで行けるだろう
目的地を決めない旅人のように
いつもどこかに向かっている
できるかぎり遠くに行って
風景の呼吸を感じながら
まだ誰も見たことのないものと
出会いたい

測ることのできない距離と時間
余白が多いほど可能性は広がる

挽きたてのコーヒー豆に
熱い湯をそそぐと
ふくらんでいく褐色の大地
コーヒーの香りで
外と内の境界線が溶ける
世界のこの場所から
朝が始まる

2013年9月17日火曜日

恋するトマト

「恋するトマト」

トマト畑は
恋する広場
あっちのトマトが
こっちのトマトに
ひとめぼれして
赤くなったり
あおくなったり
大そうどう

トマト畑は
情熱広場
真夏のお日さま
たっぷりあびて
心も熱く
燃えていくから
赤いドレスが
大流行

トマトマトマト
トマトマト

☆「とっくんこ」38号に掲載の童詩です♪
千葉の八木さんという方が、とても素敵な曲を
作ってくださり、奥様とお嬢様が歌ってくださいました!!
どうもありがとうございます
ジャズのようなポップスです!!楽しいノリノリの曲に大変身~!!

2013年7月31日水曜日

青い樹木

        「青い樹木」

夜の雨音を聞いていると
漆黒の闇の中を
銀色に光りながら
落下し続ける
無数の水滴と同化して
遥かな空とつながってくる

雨の通路をたどりながら
ねむっていると
夢にすべりこむ直前に
青い樹木が立っているのを
見かけることがある

るりるりと光っている
青い樹木は
緑の木々のあいだから
唐突にあらわれて
一瞬で心に飛び込んでくる

樹木に吸引されるように
近づいていくと
今日の自分が抱えているものが
浮かび上がって見えてくる
いつのまにか凍りつくほど
凝縮していた緊張感が
とろとろと溶けていく
からみあったまま
固まっていたものが
するすると解けていく

人は皆、一本の青い樹木を
心の中で育てている
枝葉がそよぐたびに
原初の存在に
戻っていける

雨あがりの朝には
自転車に乗って
あの青い樹木を探しにいこう
カラマツ林のなか
涼しい風を受けながら
地面に残っている
雨の雫を飛びこえて
夢の続きを追いかける

リアルと非リアルは
つながっているから
自在に行き来しながら
夢を超える


2013年3月13日水曜日

月光

      「月光」

月あかりを透かして
妖しい光を放っている
樹木の葉群れの下で
あの人が踊っている
まっすぐな眼差しで
とろけるほどしなやかに
手足が宙を舞っている

太古の祭式のように
指先からエネルギーが流れ
清められた空間が
ぽっかり出現すると
アクアマリンの空気のなか
魚座のあなたが動くたびに
音が聞こえる
静寂を溶かして
音が連なっていく

飛びかっている音色は
あのムーンライトソナタ
作曲家が苦しい恋をして
愛しい人に捧げたという
月光の旋律

あの人は、今、どんな思いで
月光を踊っているのだろう
試合直前のひととき
月光色に染まりながら
月の妖精といっしょに
無心に踊りつづける
あなたの体から
光があふれ出し
あなた自身が光源になった

どんなに濃い暗闇の時も
あなたの存在だけで
明るさを感じることができる
あなたの笑顔で幸せになる

私の宇宙のほとんど全てを
占めている人
今宵の本番で、月光を舞う
あの人の全身からキラキラと
ほとばしり出る
まぶしく華麗な月の光よ
どうか、私の心の底まで
染み通れ