2020年1月10日金曜日

サクランボの妖精さん

「サクランボの妖精さん」

 マユコの家の庭のすみっこには、一本のサ
クランボの木があって、春になったら白っぽ
い花が咲きます土塀からのぞいる花を見て、通
りかかった人々は、「あれは、梅の花かなあ
?」とか「桜じゃないの?」などと言ってい
る。梅と桜の間ぐらいの時期に咲くので、紛
らわしみたいです。暖かい地方のサクランボなの
で、粒が小さくて、それほど甘くもないのだ
けど、五月になったら、真っ赤なサクランボ
がいっぱい実り、太陽を浴びて、キラキラと
輝き始めます。マユコはサクランボの実を見て
いると幸せな気持ちになるのでした。
 学校帰りの小学生たちも、ランドセルを背
負ったままったまま。「サクランボを見せて
くださーい」と言いながら,マユコの家の庭に
どんどんやってきます。ランドセルをテラスに
ポーンと置いて、ハシゴを登って、サクラン
ボの実を採ったり、土塀の上によじのぼって
サクランボの木に近づいたり・・・。「うわ
ーい、きれいだね」「すごくおいしいね」
サクランボの実る季節には、毎日のように、
子供たちの歓声で、小さい庭がいっぱいにな
ります。中学生のマユコも一緒になってはし
ゃいでしまいます。

  ある夜のこと。マユコが宿題を終えて、窓
の方をふと見ると、カーテンのすきまが,ボ
ーッと明るいことに気が付いたのです。
「あれっ いったい何だろう?」マユコはそ
っと窓に近づいて、少しだけカーテンを開け
てみました。「ちょうどサクランボの木のあ
たりが光っているようだわ」マユコはちょっ
と怖かったのですが、その不思議な光を見て
いるうちに、何だかあたたかな気持ちになっ
てきたのです。しばらく、その光をみつめて
いると、光がこちらにやってくるような気が
したので、驚きました。「ああーどうしまし
ましょう」
 光が強くなって、、ゆっくりと回り始め、
その真ん中には、とても小さな女の子が立っ
ていたのです。まっ赤なドレスを着た、お姫
さまのように見えました。その小さい姫さま
が、何茂も手招きするので、マユコは急いで
で窓を開けました。そのとたんにピョンと飛
んで来た女の子は。小鳥のような声で「
こんばんは」と言いました。キラキラ光って
いる小さくてまあるい顔が、サクランボそっ
くりだったので 「もしかしたら、サクラン
ボのお姫さまですか?」と尋ねると こっく
りとうなずいてくれました。

 一本のサクランボの木ごとに宿っていると
というサクランボの妖精、伝説のサクランボ
姫に出会えたなんて、マユコは、うれしくて
たまりません。
 でも、サクランボ姫は、すこし困ったよ
うな表情で、「あのー すみません いつも
私といっしょに居た双子の妹が、夕暮れから
いなくなってしまって、みつからないのです
けど・・」と言ったのです。今日は、サクラ
ンボのまわりに子供たちがたくさん来ていて
はねまわっていましたから・・。「もしかし
たら」とマユコは思いました。「ちょっと待
っててね」とサクランボ姫に言って、部屋の
中をぐるっと見わたしてから、すみっこまで
探してみました。
 すると、マユコのベッドの下で小さく光っ
ているものをみつけたのです。のぞきこみな
がら、「サクランボ姫さまですか?」と声を
かけると、ゆっくりところがりながら、真っ
赤なサクランボが出てきました。
高い所にある小さな窓を、開けたままにして
いたようで、きっとそこからピョンと飛びこ
んだのでしょう。
「ここでねむってしまっていたみたい」姫は
「あーあ」 とあくびしながら立っています。
 探しに来ていたお姉さんは、半分、泣きそ
うになりながら、妹をギュッと抱きしめまし
た。二人が手をつなぐと、光が何倍に広がっ
て、とても眩しかったのです。
 「みつけてくださって、ほんとうにどうも
ありがとうございます。とても。うれしいで
す。お礼に何かプレゼントたいのですが、何
がいいでしょうか?」
マユコは欲しいものは何もなかったのですが
昨日、友だちのミキとけんかしたことを思い
出しましたので、「仲直りできるおまじない
を教えてくれませんか」と頼みました
 サクランボの双子の姫君は、ふたりそ声を
そろえて「サクラクラクラウランボ―アナタ
トナカヨクナリタイノデス」と教えてくれま
した。「笑顔で言ってくださいね」と言い終
わるとすぐに、光が窓から出て。スーと高く
飛んで行きました。サクランボの木の上で、
二つの光が踊っています。

 マユコは、次の日、学校に行ってミキに
会った時、すぐに、昨日、教えてもらった
おまじないを言ってみました 
「サクラサクサク・・・・・あれっ? 何
だっけ?」サクランボの姫さまたちの可愛
い顔と声を思う出して、もう一度、「サク
ラサクサクサクランボアナタトナカヨクナ
カヨクナリタイノデス」ニコニコ笑顔で言
いました。ミキもニコッと笑って。すぐに
仲直りできました。
サクランボ絵に出会ったことは、ないしょで


マユコの家の庭のすみっこには、一本のサク
ランボの木があって、木のてっぺんには、可
愛い双子の姉妹が居るなんて、わくわくする
ほどうれしい気分になります