2019年11月9日土曜日

公園の夕暮れ

        「風の滑り台」


風の階段をみつけて
一段一段のぼっていくと
ふいに高い台に立っていた
見渡すと木々の枝が空に溶け込みそうに
すがれていて

足元がしんしんするわ

小さく息を吐いたら
スカートのすそを
気にしながら
向こう側に
いっきに滑り降りてみる
落下する快感

いつも何かを探している
思いを振りほどきながら
ただ下降していく

地面に足が着いたら
すぐに立ち上がり
もう一度、階段をのぼる
風のすべり台はエンドレス

秘儀のように黙ったま
何度も何度も繰り返すと
あたりは、急に薄暗くなって
さっきまで遊んでいた
子供たちが誰もいない
風の音が聞こえるさけ

私も もう帰ろうかな
歩き出して振り向くと
古い樹木と錆びた金属の匂い


大きな軌道を
描き続けるブランコ
バランスを保ったまま
中空を滑っているシーシー

星明かりだけの
公園の遊具たちは
地上から少し浮かんで
ゆっくりと回り始めた