2018年1月19日金曜日

(新しい本)あの人

      「あの人」

私の風景の中に
ときおり、あの人が
現われることがある
いつ頃からだろう

ほんの少し近づいてくる
かすかな気配を感じるだけで
私の心は波立って
晴れやかな気分になってくる

いつも見慣れているれ景色
受け取っている感覚の中に
あの人が紛れ込むだけで
世界がいきなり活気づき
動き出す

無数の風景が
鮮やかに色づいて
黙ったままの大地から
音楽が立ちのぼり
私の風景の枠を超えて
溢れ出していく

あの人は誰だろう
ずっと前から知っている人なのか
まだ会ったことのない人なのかなのか
わからないけれど
なぜかとてもなつかしい

凍てついた空に
突き刺さった冬の木々の
内部にぽっと灯がともる頃
雲間からもれてくる
光が人の形になって
出現したのだろうか

あんなに澄み切った青空にになる

私の風景とあの人の風景の
境界線がゆるやかになり
重なり合う日が来るのかもしれない

あの人の名前は希望