2016年12月15日木曜日

’新しい本)冬の銀河の片隅で

 「冬の銀河の片隅で」
あなたに会いに行く日は
いつも寒い日だった
記憶の風景は決まって冬
北風に背中を押され
熱い思いだけ握りしめて

気持ちが前に前に進むので
転がりそうになりながら
待ち合わせの場所に向かう
現実の世界は
もう閉じられていて
私たちの居場所はなかったのに
どうしても会いたかった

街の雑踏を抜けると
ビルの形に阻まれていた空が
急に広がった
濃い紫色の広大な天空を
半透明な霧が走る

冬の銀河の片隅で
凍えそうになりながら
歩いていると
星の光が冷風に乗って
したたり落ちてきた

無数の星がともっていて
光の窓が開くたびに
空が抜けて通路が出来る
星はどこにでも行ける入り口になった

世界はまだ閉ざされていない
あふれるほどの光の量に
見守られている

星をつないで
星座を作っていくと
一角獣やオリオンやキリンたちが
空を縦横無尽に飛び交い始めた

あの日、待ち合わせの時間に
たどり着けたのか
間に合わなかったのか
私たちの物語は
まだ完結していない

今も、寒い日には
あの待ち合わせの場所に向かう
いつも向かっている途中だ