2016年7月22日金曜日

●糸の言葉

         「糸の言葉」

鮮やかな色の糸が
リズミカルに並び
さまざまな形を作り出している
ミャオ族の刺繍展
不思議な模様の
しなやかな美しさに
引き込まれていく

布が呼吸している
と思った瞬間
刺繍糸のあいだから
一匹の蝶々がこぼれ出て
展示ケースを抜け出して
宙を舞い始めた

あちらからもこちらからも
たくさんの蝶々が
飛び出して
無数の精霊を連れて
いっせいに乱舞している

光る粉が降り注ぐ
鱗粉に触れたら
懐かしい場所にあいだ帰っていく

ミャオ族の最初ん人は
蝶々の卵から
生まれたという

風の中できらめいている
ひかりを探し求めて
風のすきまに
すべりこみながら
追いかけ続けた
あの日々

蝶々の魂を宿し
宇宙に張り巡らされている
見えない糸を
たぐり寄せ染め上げて
伝えたい思いを
一針一針にこめて
刺していく

私は山麓の村に住み
涼風の中で手仕事をしている
ミャオ族の女になっていた

届けたかった思い
あなたに届いていますか



2016年7月21日木曜日

2016年7月6日水曜日

もっと遠くへ

  「もっと遠くへ」

土手道に自転車を停めて
とろとろっと降りていくと
なつかしい水の匂い
乱反射している水面を
みつめていると

草むらから弾ける音がして
風が走り
鮮やかな蝶がゆっくり飛翔する

時空が変化する瞬間
心は清められていく
川は太古から流れてきて
未来に向かっているのか

いつもの風景なのに
初めて訪れた場所のように
みずみずしく光っている
ここはどこの惑星だろう

ほんの少し移動しただけで
はるかな異空になる

あなたが見守ってくださるから
私たちは安心して進んで行ける

地面から湧き上がる
新緑の勢いと
あなたの視線に
押し上げられて

もう一度
坂道をのぼって
もっと遠くまで行ってみよう
未知の言葉の世界へ