2014年7月23日水曜日

どこまでも

   「どこまでも」

私は山道を歩いていた
地球の感触を確かめるように
ゆっくりと踏みしめる
記憶の石ころを越えて
雑念の岩を迂回して
一歩ずつ進む

木々の枝がつぎつぎと
手を差し伸べて
歓迎してくれる
緑の葉脈を透かして届く
光に浄化されていく


遠い星から指令を受けて
やって来た使者のように
押し黙ったまま
同じ方向に向かっている
色とりどりのパーカーの群れに
紛れ込むと

背中が少し重くなる
バックパックには何を
詰め込んできたの
必需品の隙間で生まれた
希望の欠片が
どんどん膨らんでいる

一歩前に踏み出すたびに
上昇していくのか
下降しているのか
わからなくなるけれど
トレッキングシューズの靴底だけで
地上と繋がっている
奇妙な浮遊感の
不安定さが心地良い

どこに向かっているのだろう
どこでもいい
ただひたすら歩いていると
心も体も空っぽになってくる

無に近くなった頃
自分の内部のどこかで
真新しいものが
ふつふつと湧きあがってくる

どこまで歩くのだろう
どこまでも