2013年11月28日木曜日

朝の風景

「朝の風景」

世界のどこかで
艶のある闇色のタマゴから
フワッと飛び出す朝の光
生まれたての光は
眩しいエネルギーの源
膨大な量に増殖して
何億もの窓に
押し寄せてくるから
ガラス窓は膨張して
大きくしなり
部屋の中まで風景が
なだれこんでくる

私は静かに受け止めて
ゆっくりと元の場所にもどす
山の位置 空の位置 自分の位置
カチッと嵌った時
無音だった風景が
新しい今日の音楽を
奏で始める
まっすぐ伸びる視線
さえぎるものがないから
聞いたことのない旋律が
響きわたり体内にこだまする

今日はどこまで行けるだろう
目的地を決めない旅人のように
いつもどこかに向かっている
できるかぎり遠くに行って
風景の呼吸を感じながら
まだ誰も見たことのないものと
出会いたい

測ることのできない距離と時間
余白が多いほど可能性は広がる

挽きたてのコーヒー豆に
熱い湯をそそぐと
ふくらんでいく褐色の大地
コーヒーの香りで
外と内の境界線が溶ける
世界のこの場所から
朝が始まる