2013年3月13日水曜日

月光

      「月光」

月あかりを透かして
妖しい光を放っている
樹木の葉群れの下で
あの人が踊っている
まっすぐな眼差しで
とろけるほどしなやかに
手足が宙を舞っている

太古の祭式のように
指先からエネルギーが流れ
清められた空間が
ぽっかり出現すると
アクアマリンの空気のなか
魚座のあなたが動くたびに
音が聞こえる
静寂を溶かして
音が連なっていく

飛びかっている音色は
あのムーンライトソナタ
作曲家が苦しい恋をして
愛しい人に捧げたという
月光の旋律

あの人は、今、どんな思いで
月光を踊っているのだろう
試合直前のひととき
月光色に染まりながら
月の妖精といっしょに
無心に踊りつづける
あなたの体から
光があふれ出し
あなた自身が光源になった

どんなに濃い暗闇の時も
あなたの存在だけで
明るさを感じることができる
あなたの笑顔で幸せになる

私の宇宙のほとんど全てを
占めている人
今宵の本番で、月光を舞う
あの人の全身からキラキラと
ほとばしり出る
まぶしく華麗な月の光よ
どうか、私の心の底まで
染み通れ