2012年8月2日木曜日

樹木と太陽と

「樹木と太陽と」

真夏の午後の
太陽は空のまん中で
大きくふくらんで
膨大な量の光を
投げかけてくる

強い熱風をあびて
風景は立ち止まり
居場所を失って
とろとろとけ始める」

建物も電柱も道路も
みんな空とつながって
不思議な曲線を描き
ゆるやかに渦を巻いている
時間もとけ出しているらしい
心が巻きこまれそうになる

私は、粘っこい粒子を
かきわけながら前に進み
からまってくる空気を
くぐりぬけると
目の前に一本の樹木が
立っていた

樹木はくっきりとした
りんかくを持ち
空に向かって上昇していた
めらめらと燃えたつように
伸びあがって
太陽と対面している

葉の先まで澄み切って
すべての光を受けとめて
枝葉が揺れている
樹木の内部からのエネルギーで
あたりの大気がほどけて
風になっている

真夏の午後
ゴッホの絵の中に
まぎれこんだような
ひととき
あの樹木のなぞは
まだ解けないままだ